【インタビュー】22歳で抹茶スタートアップを創業──株式会社アルテム 加藤憧氏に聞く、抹茶で世界を変える挑戦
抹茶という日本文化を軸に、世界市場に挑む若き起業家がいる。
今回は、抹茶製品の開発・販売を手がけるスタートアップ株式会社アルテムの代表取締役加藤憧氏に、起業のきっかけや商品開発の裏側、そして将来のビジョンまで伺いました。
Q1. 起業に至ったきっかけを教えてください。
加藤氏:
起業への思いは、高校時代に芽生えました。もともと親が経営者である影響もあって、会社に勤めるよりも自分で何かをつくって世の中に価値を届けたい、という気持ちが自然と育っていたんです。
その思いを強めたのは、大学での学びやインターンでの経験でした。ビジネス専攻の学部に進み、実際に企業で働かせてもらう中で、「自分で意思決定して、自分の責任で何かを動かす」ということに強く魅力を感じるようになりました。
そして、大学在学中というタイミングで、自分の力でゼロから何かを立ち上げたいと思い、起業という道を選びました。
Q2. なぜ「抹茶」を事業のテーマに選んだのでしょうか?
加藤氏:
最初から抹茶に決めていたわけではありません。大学ではさまざまな分野を学び、また国内外を旅しながら、多角的にビジネスのヒントを探っていました。
その中で感じたのが、「日本の文化には世界で勝てる可能性がある」ということでした。特に海外に行くと、抹茶が若い女性に”MATCHA”として親しまれているシーンによく出会いました。
ラテ、スイーツ、アイスクリーム……どこに行っても抹茶フレーバーが存在感を放っていたんです。
改めて市場調査をしてみると、抹茶は健康価値が高いだけでなく、日本のブランドとしてのポテンシャルも大きい。これは自分のビジョン──「日本発で、世界に届くブランドをつくる」という想いと重なると確信しました。
Q3. 22歳という若さで起業するにあたって、不安はありませんでしたか?
加藤氏:
もちろんありました。正直、最初の頃はわからないことばかりでした。ビジネスの基礎は学んできたものの、実際の事業となると、資金調達、仕入れ、法務、製造管理、営業……すべてが実践。しかも、自分は学生で、社会的信用や人脈も少なかったので、ゼロからの挑戦でした。
それでも「今だからこそできることがある」と信じて行動しました。わからないことは、実際にやっている人に聞きに行く。時間がある分、現地に足を運んで学ぶ。失敗しても取り戻せる若さは、自分の武器でもあると思っていました。
起業当初は、失敗することを恐れるよりも、「何も行動しないこと」の方がリスクだと思っていましたね。

Q4. 現在行っている事業について詳しく教えてください。
加藤氏:現在は主に抹茶ブランド事業を行っています。
創業時から抹茶の粉末やキットを北米に展開するような越境ECの事業を行っていましたが、国内外のカフェ事業者とのコミュニケーションを通じて多方面の抹茶需要を目の当たりしたので、そのような知見から現在は国内外のスーパーや、小売店向けの抹茶製品の卸事業というところに注力しています。
現在は、宇治抹茶を使って自宅でミルクと混ぜるだけで、簡単にカフェのような抹茶ラテが飲める抹茶ラテベースを開発しています。
Q5. 今注力されている「宇治抹茶ラテベース」とは、どんな商品ですか?
加藤氏:
これは、ミルクと混ぜるだけでカフェクオリティの抹茶ラテが自宅で作れる、というコンセプトの商品です。
実際に飲食事業者の方々にヒアリングを重ねる中で、「市販のラテベースでは味が安定しない」「変色が早くて品質に不安がある」などの課題が見えてきました。
それらを解決できる製品をつくろうと、長期にわたって試作・検証を繰り返してきました。
味や香りはもちろん、抹茶の持つ鮮やかな緑をできる限りキープする技術にも力を入れています。おうち時間が増える中で、手軽に高品質な抹茶体験を提供できる商品を目指しました。
Q6. 商品開発で苦労した点、乗り越えた経験を教えてください。
加藤氏:
抹茶は非常に繊細な原料で、加工や保存が難しい素材なんです。
まず苦労したのは、開発に協力してくれる工場探しでした。抹茶の扱いに慣れている工場は少なく、色や風味を保持したままラテベース化できるパートナーを見つけるのに時間がかかりました。
さらに、国内外での販売を見据えていたため、食品表示のルールや輸出関連の規制にも対応しなければなりませんでした。初めてのことばかりで、専門家に何度も相談しながら一つひとつ乗り越えました。
ただ、そういった困難を乗り越える中で、製造や品質管理の知識が深まり、自社にとっての強みを築くことができました。
Q7. 製造者として、消費者にもっと知ってほしい抹茶の魅力はありますか?
加藤氏:
抹茶って、実はものすごく栄養素に恵まれているんです。
普通のお茶は茶葉をお湯に抽出して飲みますが、抹茶は「茶葉そのもの」を粉末にして飲む。つまり、茶葉に含まれる栄養素を丸ごと摂取していることになるんです。
例えば、カテキンは抗酸化作用、テアニンはリラックスや集中力の持続に効果があると言われています。現代人にぴったりな健康機能が詰まっているんです。
あと、色にも注目してほしいです。高品質な抹茶ほど鮮やかな緑を持ちますが、それはクロロフィルが多い証拠で、その分、時間が経つと褐色化しやすいんです。
だからこそ、きれいな緑色が保たれている抹茶製品には、裏で多くの努力があるということも知っていただけたらうれしいです。

Q8. 抹茶の情報発信にも力を入れていると聞きました。
加藤氏:
はい。2025年から、抹茶に関する専門メディアを立ち上げました。
抹茶は今、世界中でブームになっていますが、その背景にある「文化」や「作り手の思い」までは十分に伝わっていないと感じています。
私たちは単に商品を販売するだけでなく、“抹茶の本質的な価値”を正しく伝えることが、自社の役割だと思っています。
インタビュー記事や産地取材、開発ストーリーなどを通じて、抹茶を単なるトレンドで終わらせない取り組みを続けていきたいです。
Q9. 今後の展開、描いているビジョンは?
加藤氏:
私たちは、「2030年までに世界的な抹茶企業になる」ことを目標にしています。
今後は商品ラインナップの拡充や、輸出先の多様化、グローバルパートナーとの協業など、より広く・深く事業を展開していく予定です。
それと同時に、日本の茶文化やクラフトマンシップの価値を、世界中の人たちに伝えていきたいです。
抹茶は、単なる飲料ではなく「日本文化の結晶」だと思っています。
その価値を次世代につないでいくことが、私たちの使命だと感じています。
Q10. 最後に、起業を志す若者や学生へメッセージをお願いします。
加藤氏:
今後、日本は国内市場が人口減少に伴って縮小していく中で、日本の強みを生かしたような製品や技術を、海外に展開して外貨を稼ぐ必要があると心から思っています。それにあたって、弊社のミッションである「2030年までに世界的な抹茶企業になる」というミッションを達成するには、社内の協力ももちろんですが、社外の皆様との共創が欠かせないと考えています。抹茶業界の皆様や、今後日本から世界に羽ばたくような起業家候補の方々との共創を通じて、共に日本を盛り上げていけたらと思っています。
編集後記:
加藤憧氏は、ただ商品を作るだけの起業家ではない。抹茶を通じて日本文化の継承と発信を担う、「カルチャークリエイター」としての側面を感じさせる存在だ。彼が描く未来図が実現される日、それは、抹茶が世界の共通語になる日かもしれない。
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