抹茶の産地マップ|日本各地の名産地と特徴を知る
抹茶と一口に言っても、その味・香り・色は産地によって驚くほど異なります。この記事では、日本を代表する抹茶の産地とその特徴を解説しながら、それぞれの地域が持つ「土壌」「気候」「製法」の違いにも注目します。購入や選び方に悩んでいる方、観光で茶産地を訪れたい方はぜひ参考にしてください。
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弊社では、京都・宇治をはじめ、鹿児島・福岡・静岡など日本各地の産地から、
有機JAS認証付きのセレモニアルグレードから加工用まで、幅広いグレードの抹茶を取り揃えております。
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日本の主要な抹茶産地とは?

日本で栽培される抹茶の定義と概要
抹茶は碾茶(てんちゃ)を石臼で挽いて粉状にしたもので、煎茶や玉露とは異なる製法・用途で扱われます。日本国内で高品質な抹茶が生産されている地域は限られており、その多くが以下の条件を満たす場所です。
年間の寒暖差が大きい
抹茶の原料である碾茶(てんちゃ)は、晩春〜初夏にかけて収穫されます。この時期に寒暖差がある地域では、以下のような効果が得られます
- 昼に光合成で養分を蓄え、夜に呼吸量が抑えられることで栄養が保持されやすい
- 茶葉の細胞がゆっくり成長し、旨味成分(L-テアニン)や甘み成分が多く蓄積される
つまり、昼夜の温度差が大きいことで「風味の濃い茶葉」が育ちやすくなります。
参考:農研機構 茶業研究所「環境要因と茶葉品質」https://www.naro.go.jp/
日照時間を調整しやすい
抹茶は「かぶせ茶(被覆栽培)」と呼ばれる特殊な方法で育てられます。収穫の20日前後から黒い覆いをかけて日光を遮ることで、次のような変化が起きます
- L-テアニン(旨味成分)がカテキン(苦味成分)に変化するのを防ぐ
- 葉緑素が増えてより濃い緑色に
- 渋みや苦味を抑えた「まろやかで甘い抹茶」になる
このため、遮光資材の設置や管理がしやすい平坦地または小高い丘陵地が最適とされます。
出典:京都府立大学「被覆栽培によるテアニンの保持効果」https://www.kpu.ac.jp/
水はけの良い土壌
茶の木は湿気にはやや弱く、過剰な水分は根腐れや病気の原因になります。そのため
- 水はけの良い斜面や砂壌土などの地質が理想
- 地中の水分バランスが保たれ、根が健康に張り巡らされることで、養分をしっかり吸収
さらに、土壌に含まれるミネラル分(特にカリウム・マグネシウム)も茶葉の香りや味に影響を与えるため、栽培地域の地質そのものが味に現れることもあります。
出典:農林水産技術会議「茶園土壌の管理と品質向上」https://www.affrc.maff.go.jp/
代表的な抹茶の産地と特徴
宇治(京都府)|抹茶の代名詞、伝統と技の結晶

特徴:甘みとコク、歴史ある茶文化
宇治は日本でもっとも有名な抹茶の産地。日本最古の茶栽培地の一つとして、鎌倉時代から続く栽培と製法の歴史があります。碾茶の製造も盛んで、手摘み・手もみ・石臼挽きなど伝統技術が今なお継承されています。
甘味と旨味のバランスが絶妙
宇治の抹茶は、L-テアニン(旨味)とアミノ酸の含有量が豊富で、かつ適度な渋みが抑えられています。これは宇治の気候(土壌・朝霧・寒暖差)と長年の被覆栽培技術の賜物です。上質な抹茶は、口に含んだ瞬間にまろやかな甘味が広がり、舌の奥に深いコクが残るような感覚を味わえます。
また、石臼で丁寧に挽かれた微粒子状の抹茶粉は舌触りも滑らかで、泡立ちの良さ(泡のきめ細かさ)にも宇治抹茶の品質の高さが現れています。
茶道向けの高級抹茶が多い
宇治には「上林春松本店」「丸久小山園」「山政小山園」など数百年続く茶問屋や製茶業者が集中しており、多くが茶道の家元(表千家・裏千家など)御用達の高級抹茶を供給しています。
これらの製品は、茶道での点前用として選ばれるため、
- 香りの高さ(火香・青みのバランス)
- 泡立ちやすさ(石臼挽きの粒子精度)
- 色の濃さ(クロロフィルの含有量)
といった点で厳格な品質基準が求められています。結果として、宇治産の抹茶は贈答用や茶道愛好家から非常に高い評価を得ており、セレモニアルグレードの代名詞ともいえます。
「宇治七名園」など観光名所も豊富
宇治には、日本茶のルーツをたどることができる観光スポットが数多く存在します。
代表的なのが「宇治七名園」と呼ばれる、室町時代に将軍足利義満が選定したとされる優良茶園の名跡。これには「奥ノ山」「田原」「宇治川畔」などの茶園が含まれ、現在もその名を冠した抹茶が流通しています。
また、宇治川を中心に広がる街には、
- 世界遺産「平等院鳳凰堂」
- 老舗の抹茶喫茶「通圓」
- 茶文化を学べる「宇治市源氏物語ミュージアム」や「宇治茶道場 匠の館」
など、抹茶と日本文化を深く体験できる名所が点在しています。観光地としての魅力もあり、国内外から多くの抹茶ファンが訪れます。
【出典】宇治茶の郷づくり協議会 https://ujicha.kyoto
西尾(愛知県)|生産量全国一、実力派の抹茶王国

特徴:鮮やかな色味と濃厚な香り
愛知県西尾市は、日本国内で最大の碾茶(てんちゃ)生産量を誇る、実力派の抹茶産地です。京都・宇治と並び称される高品質抹茶の一大拠点として、茶業者・食品メーカーからの信頼も厚く、全国的な需要を支えています。
全国一の碾茶生産地
西尾市は、気候や土壌が抹茶の栽培に非常に適しており、2023年時点で日本の碾茶生産量の約30〜35%を占めると言われています(※農林水産省 茶業統計より)。
この地域では、抹茶用品種のさみどり・やぶきた・おくみどりなどが栽培され、安定した品質と収穫量を誇ります。
特に碾茶専用の被覆栽培技術が早くから導入され、広大な平野部に効率よく黒覆いを設置できる地理的条件も生産性の高さにつながっています。
鮮やかな緑と豊かな香り
西尾抹茶の特徴としてまず挙げられるのが、色鮮やかな緑色と華やかな香りです。被覆栽培によって生成された豊富なクロロフィルが、美しい発色をもたらし、石臼挽きにより粉末状にすることで、その色合いは抹茶スイーツやラテなどでも際立ちます。
また、火入れ工程(仕上げ乾燥)の技術に優れており、苦味を抑えながらも豊かな芳香を引き出す加工技術も、西尾産の評価を高める要因の一つです。
実際に、食品加工業者が求める「見た目に美しく」「風味が持続する」抹茶として、非常に高い需要を集めています。
お菓子・ドリンク業界との連携が強い
西尾市には、OEM対応を含む抹茶加工業者や卸売業者が多数存在し、大手製菓メーカー・飲料メーカーとの取引が非常に活発です。たとえば、以下のような用途で西尾産抹茶が幅広く使われています
- 抹茶チョコレート・ラングドシャ・アイスクリーム
- コンビニスイーツやスムージー
- 抹茶フラペチーノやラテなどの飲料用パウダー
また、西尾市は「西尾の抹茶」という地域団体商標(※登録第5056525号)を取得しており、産地表示のブランド戦略も強化されています。これにより、製品表示の裏付けや流通の信頼性が高まり、国内外への輸出・展開もスムーズに行える体制が整っています。
【出典】西尾市観光協会 https://nishiokanko.com/
鹿児島(南九州市・志布志市)|南国の新星、機能性に優れた抹茶

特徴:ポリフェノール含有量が高く、価格競争力も◎
鹿児島県は、静岡・京都・三重に次ぐ全国第4位の茶葉生産地として知られ、近年では碾茶・抹茶の新興生産地として存在感を増しています。特に南九州市・志布志市などの南部地域は、温暖な気候と大規模機械化農業を活かした、国際競争力のある抹茶づくりを展開しています。
有機JASや海外認証取得品が多い
鹿児島県では、1990年代から有機農法の導入が積極的に進められてきた背景があり、現在でも「有機JAS認証」の取得農園が全国トップクラスに位置しています。
さらに、欧米市場に対応するために
- EUオーガニック認証(EU Organic)
- アメリカ USDA Organic
- カナダ有機認証(COR)
など、複数の国際規格に適合した抹茶の輸出体制が整っており、オーガニック食品需要の高い北米・欧州への輸出が加速しています。
苦味が少なく、すっきりとした味
鹿児島の抹茶は、苦味や渋みが控えめで、すっきりとした味わいが特徴です。理由としては次の点が挙げられます:
- 日照量が多いため、葉の厚みとテアニン濃度が最適に育成される
- 被覆栽培期間を適切に調整し、苦味成分(カテキン)の生成を抑制
- 火入れ加工(仕上げ乾燥)で香りと甘さを引き出す技術力の向上
これにより、ラテやスムージーなどの飲料に適した雑味のないクリーンな味が得られ、多くの加工メーカーに支持されています。
また、温暖な気候で1年に2回収穫する二番茶以降も品質が良好で、食品加工用途でもコストパフォーマンスの良さが評価されています。
健康志向・輸出向け商品が主力
鹿児島の抹茶は、国内販売以上に輸出向け戦略に強みを持っています。とくに健康志向が強いアメリカ・カナダ・EUなどでは、日本の「有機抹茶=機能性ヘルスフード」として評価されており、以下のような製品で採用が進んでいます
- 海外のオーガニックスーパーで販売される抹茶粉末
- プロテイン入り抹茶ラテなどの機能性ドリンク
- ヴィーガン・グルテンフリー商品への応用
また、ポリフェノール・カテキン・テアニンなどの栄養成分量が安定して高いという分析結果があり、食品企業からも「機能性素材」として高評価を得ています
【出典】鹿児島県茶業会議所 https://www.kagoshima-cha.or.jp/
八女(福岡県)|旨味重視の高級路線が魅力

特徴:玉露の技術を応用した奥深い味わい
八女市を中心とする福岡県南部は、**「八女伝統本玉露」**で知られる高級茶の名産地。近年ではその技術を応用した抹茶も生産されており、旨味成分のテアニンを多く含むことが特徴です。
旨味と香りの調和がとれた味
八女の抹茶は、何よりも旨味の深さと、上品な香りのバランスが特徴です。これは、玉露と同様に長期間の被覆栽培を施すことで、旨味成分(L-テアニン)の分解を抑え、苦味成分(カテキン)を減らしているためです。
また、山間部の冷涼な気候が茶葉の生育をゆっくりにするため、養分がしっかりと蓄積された味の濃い茶葉になります。
仕上げ加工ではやや浅めの火入れを行い、抹茶本来の青み・甘み・香気成分を引き出す手法が主流です。
玉露・煎茶生産者が抹茶に参入
八女はもともと「八女茶(煎茶)」と「伝統本玉露」の産地として発展してきました。とくに玉露は手摘み・棚栽培・長期被覆など極めて丁寧な生産技術を必要とし、その技術を持つ生産者が近年、抹茶の碾茶生産にも進出しています。
参入の背景には
- 玉露の市場縮小による品目転換
- 国内外の抹茶需要の拡大(特に健康・輸出市場)
- 同じ「被覆茶」として栽培ノウハウが活かせること
があります。結果として、品質に妥協しない丁寧で風味豊かな抹茶が八女から供給されるようになり、市場での地位も急上昇しています。
贈答用や高価格帯商品に人気
八女の抹茶は、その高級感・味の完成度の高さから、贈答用商品やプレミアム抹茶としての展開に適しています。
具体的には
- 木箱入り・桐箱入りの高級抹茶ギフト
- 抹茶専門店や和菓子店による“八女抹茶”ブランド使用
- 海外市場向けのセレモニアルグレード抹茶としての輸出
が進んでおり、「宇治・西尾・鹿児島」とはまた異なる、”味で選ばれる抹茶産地”として確固たるポジションを築いています。
特に、八女市・広川町・星野村などでは農家と茶商が連携し、少量高品質ロット・個別ブレンド対応など差別化も可能な体制が整っており、ラグジュアリーな茶体験を求める層に最適といえます。
【出典】八女茶業協同組合 https://www.yamecha.or.jp/
静岡(川根・牧之原など)|量産型から有機抹茶まで多様化が進む

特徴:多様な土壌と標高差で幅広い製品ラインを確立
全国の煎茶生産量で常にトップを争う静岡県ですが、近年は有機抹茶や輸出向け抹茶の開発が加速しています。標高の高い川根本町や、大規模茶園のある牧之原台地など、地域ごとに特性があります。
有機JAS・EUオーガニック対応
静岡県では、特に川根本町・島田市・菊川市・牧之原市などを中心に、有機JAS認証取得の抹茶農園・工場が数多く存在します。
それだけでなく、海外輸出を視野に入れたEUオーガニック規格やUSDA Organicにも対応した事業者も増加しており、グローバル需要を見据えた体制が整いつつあります。
静岡県は長年、環境にやさしい農法・減農薬指導に積極的な自治体政策を進めてきたこともあり、有機栽培の裾野が広いのが特徴です。
標高・気温差を活かした生育
静岡は南北に広く、平野部から標高300〜600mを超える山間部の茶園まで存在するため、茶樹にとって理想的な環境条件が揃っています。特に川根本町や本川根地区では
- 朝晩の寒暖差が大きく、テアニンやアミノ酸が葉に凝縮
- 谷筋から発生する朝霧が葉を守り、自然の被覆効果を生む
- 傾斜地のため水はけが良く、根が健康に育つ
といった地理的利点があります。これらの環境は、自然の力を活かした高品質抹茶づくりに適しており、有機農法とも相性が良いため、近年は山間有機抹茶のブランド化が進んでいます。
欧米市場向けの製品が豊富
静岡県の抹茶産業は、近年明確にB2B輸出志向に舵を切っており、以下のような製品ラインアップが揃っています
- オーガニック抹茶パウダー(EU・USDA対応)
- スティックタイプのインスタント抹茶
- スムージー・グリーンティー用加工原料
- OEM対応(焙煎温度・粒度調整)製品
特に欧米では、紅茶文化の中に抹茶を取り入れた“ヘルシーな選択肢”として評価されており、静岡産の抹茶は「安心・信頼できる供給源」として高く評価されています。
さらに、日EU経済連携協定(EPA)の影響で、EU圏への輸出関税が撤廃されたことも追い風となり、静岡県の事業者はパリ・ロンドン・ベルリンなどの高級食材市場にも進出しています。
【出典】静岡県茶業会議所 https://www.o-cha.net/
抹茶産地の特徴をマップで理解しよう
以下は日本の主な抹茶産地の簡易マップです
| 地域 | 都道府県 | 主なブランド・特徴 |
|---|---|---|
| 鹿児島 | 鹿児島県南九州市・志布志市 | 有機・機能性・輸出向け |
| 八女 | 福岡県八女市 | 高級感・玉露技術 |
| 西尾 | 愛知県西尾市 | 全国一の碾茶生産量 |
| 宇治 | 京都府宇治市 | 歴史と品質の象徴 |
| 静岡 | 静岡県川根・牧之原 | 多様性・有機・輸出対応 |
【参考資料】
- 農林水産省「茶の生産動向」https://www.maff.go.jp/
- 各茶業協会HP
- 一般社団法人日本茶業中央会 https://www.nihon-cha.or.jp/
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まとめ|あなたに合う抹茶産地を選ぼう
抹茶の産地ごとに、味・香り・色・製造方法は異なります。伝統を重視するなら宇治、機能性やコスパ重視なら鹿児島、バランス型なら西尾や静岡がおすすめです。購入の際は、産地表示・等級・製法の明記された商品を選ぶことが、納得のいく一杯に出会う近道です。


