【インタビュー】「お茶が無い未来なんて考えられない」──抹茶クレイジーガールみんちゃんが語る“抹茶愛”と地域PRの最前線
プロフィール
抹茶クレイジーガールみんちゃんは、「日本を緑色にする女」として活動する抹茶系インフルエンサー/イベントプロデューサー。2019年に自身のYouTubeチャンネルを開設し、産地紹介や商品レビュー、独自企画『抹茶と私の結婚式』(2022年)などで注目を集めた。ミッションは “日本の抹茶の味がずっと在る環境づくり”。その一環で京都府の茶産地・南山城村道の駅と和束町のPR大使を務め、全国で抹茶イベントやマーケティング講座を開催している。さらにTikTokやミクチャの公認ライバーとしてライブ配信を行い、抹茶の⽇常消費拡大と産地の魅力発信に取り組むなど、オンラインとオフライン両面で活動領域を広げている。
今回はそんなみんちゃんに、抹茶に魅せられた原点から産地PRに懸ける想い、そして「お茶の未来」を守るためのビジョンまで、たっぷりと語ってもらった。
Q1. まず最初にお聞きしたいのですが、抹茶に興味を持ったのはいつ頃だったのでしょうか?
抹茶に本格的にハマったのは、私が高校生だった18年前のことです。当時、すごく好きだったミュージシャンが和のアイテムや雰囲気を取り入れていて衝撃を受けました。そこから自然と、抹茶スイーツや飲み物に手を伸ばすようになったんです。
でも今振り返ってみると、その“抹茶の魅力に気づける感性”のようなものはもっと前から育まれていた気がします。というのも、私は小学生のときに曾祖母の影響で生け花を始めていたんです。小原流の先生に教わりながら、季節や色の調和、所作の美しさに触れていたことが、今の抹茶への関心につながっているのかなと。
抹茶に魅せられたのは偶然のようでいて、じつは積み重ねられた体験が導いてくれた結果なのかもしれません。
Q2. それ以来、抹茶との関わりはどのように深まっていったのでしょうか?
完全に“沼”でしたね(笑)。高校時代から、抹茶商品を見かけたら迷わず手に取ってました。値段とか関係なく、「見たことがない=買う!」という感じで。今思えば、かなりのオタク的なハマり方だったと思います。
特に好きだったのは、このメーカーは、抹茶をどのように捉え、どのように表現したのかを、一つの作品として楽しむことです。パッケージを見ただけで、どの企業が作った商品か、どんな味か、だいたいの想像がつくようになってしまいました(笑
SNSが今ほど一般的でない時代は、Mixiにひたすら抹茶商品の写真をアップしていました。アルバム機能がすぐいっぱいになって、いつも整理しながら抹茶だけでアルバムを作っていたんですよ(笑)。今とやっていることは、案外変わっていません。
Q3. 以前はイベント制作のお仕事もされていたそうですが、なぜ“抹茶の世界”にシフトされたのでしょうか。
はい、もともとは音楽やスポーツの大型イベントの制作業務をしていました。日比谷公園など、いわゆる「都心の一等地」で行われるフェスの運営に関わるなど、やりがいのある仕事でした。ありがたいことに忙しく、収入面も安定していたと思います。
でもその一方で、自分の中で「このままではダメかもしれない」という違和感が芽生えていったんです。きっかけは、YouTubeで毎日抹茶に関する動画を投稿し始めたことでした。動画を通してさまざまな情報を調べる中で、日本茶業界が直面している問題を知りました。
急須でお茶を淹れる習慣が減り、農家の高齢化が進み、茶農家の数も急激に減少している。
このままでは「好きな抹茶」が将来なくなってしまうかもしれないと思ったとき、本当に怖くなったんです。
そこで、「今、自分がやるべきことって何だろう?」と考えた結果、抹茶の魅力を伝える活動に舵を切る決断をしました。お金よりも、“お茶の未来を残すこと”に人生を使いたい。そう思ったんです。

Q4. 茶道も学ばれているそうですね。なぜその道に進まれたのでしょうか。
2020年に今の活動を本格的に始めたとき、「茶道を知らずに抹茶は語れない」と思ったのがきっかけです。いろんな流派がある中で、偶然出会った先生が表千家で、「この先生から学びたい」と思って入門しました。
茶道って、“自分との対話”でありながら、“相手へのもてなし”でもある。この両面性が本当に深いし、日々の在り方を見つめ直すきっかけにもなると思っています。抹茶の奥深さを肌で実感するようになりました。
Q5. 地域のPR大使としても活動されていますよね?
はい。南山城村にある、道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村のPR大使と、もう一つは和束町の、茶源郷 和束PR大使を務めています。
村がとくに力を入れているのが、“観光と移住の促進“です。南山城村は、子育て環境も整っていて、人がとっても温かいんです。“ここに住んでみたい”と思っていただける人を少しでも増やすことで、これから将来のお茶の担い手になり得る人からも「ここなら長く住んでゆきたい」と思っていただくことが大切だと捉えています。
和束町も、新しい道路や魅力的な民宿ができるなど、観光に力を入れています。
Q6. 海外の祭り「セントパトリックスデー」にも抹茶を絡めているとお聞きしました。
はい、それがすごく面白いんです!毎年3月のセントパトリックスデーってアイルランド発祥の“緑”がテーマの祭りで、今ではアメリカやヨーロッパでも大盛り上がりなんです。最近ではアイルランド大使館が主催している代々木公園でのイベントに茶業関連企業が出展して、私もイメージガールとして参加しました
“緑の食べ物を楽しむ日”が日本でも定着すれば、抹茶の需要が毎年必ず生まれる。ハロウィンのように、文化として根付いたら最高ですよね。そうなれば、私がこの世を去った後でも、抹茶の売上に貢献できるかもしれないって思いました。それってめっちゃすごくないですか!?

Q7. みんちゃんさんは、抹茶の未来をどう描いていますか?
大きく3つあります。
まず一つ目は、抹茶を家庭で嗜む習慣を根づかせること。
今の時代、抹茶は「カフェで飲む特別なもの」や「インスタ映えするスイーツ」のイメージが強くなっています。でも本来、抹茶はもっと身近な存在だったはずなんです。お茶を点てることは難しいと思われがちですが、実はちょっとした工夫と習慣で、毎日の暮らしにも自然に取り入れられます。私が配信などを通じて伝えているのは、そんな“日常に溶け込む抹茶の在り方”です。「朝コーヒーの代わりに抹茶を点てる」「おやつに抹茶ラテを作る」——そうした小さな選択が、未来の文化を作っていくと思っています。
二つ目は、お茶屋さんや茶農家さんがしっかり稼げる仕組みを作ることです。
お茶って、素晴らしい伝統や価値を持っているのに、それを支える人たちの暮らしが安定していない現実があります。これは本当に悲しいことです。若い人たちが「お茶に関わる仕事がしたい」と思っても、経済的に難しいから諦めてしまう。そんな業界では持続可能性はありません。だからこそ、ただ飲むだけではないお茶の新しいマネタイズの形や、参入障壁の見直しが必要だと思っています。
そして三つ目は、住みたいと思える茶産地をつくること。
いいお茶は、いい土地と、そこに暮らす人々がいてこそ育まれます。でも、地方では人口減少や高齢化、若年層の流出が進んでいて、茶畑を守る人自体がどんどん減っています。だから私は、茶産地が「ただお茶を作る場所」ではなく、「人が集まり、暮らしたくなる場所」になるような取り組みをしたいと考えています。京都や静岡以外にも、日本全国に茶産地があるので、各地と協力してゆきたいと思っています。
抹茶は今、海外でも人気が高まっています。だからこそ、ブームの裏にある持続生産の課題から目を背けることはできません。日本国内産の美味しい抹茶の未来を守るために、これからも私は「伝える」「つなぐ」役割を全力で担っていきたいと思います。
抹茶タイムズで、抹茶文化の今と未来をもっと深く

抹茶タイムズでは、幅広いテーマで抹茶に関する情報を発信しています。
- 茶道や抹茶の歴史を学びたい方
- 抹茶と健康・美容との関係に興味のある方
- 海外トレンドや最新テクノロジーとの交差に関心がある方
どなたでも楽しめる記事を揃えています。ぜひ一度、他の記事もご覧ください。
編集後記
「好き」が人を動かす。そのことを、みんちゃんさんの言葉の一つひとつから改めて実感しました。
抹茶という一杯のお茶には、味わいや香りだけでなく、人と人、人と土地、過去と未来をつなぐ力がある——そんな確信を抱かせてくれる時間でした。
お茶を飲むという行為が、これからの暮らしや社会にとってどんな意味を持つのか。それは、ただの“ブーム”で終わらせてはいけない問いなのかもしれません。
みんちゃんさんの活動は、確実に“未来の抹茶文化”の土台を築いているように思えます。そしてその姿は、私たち一人ひとりに「自分の好きなものをどう守るか?」を問いかけてくれているようでもあります。
あなたの日常に、今日からちょっとだけ“抹茶”を足してみませんか?
それが、誰かの未来を守る一杯になるかもしれません。
抹茶タイムズ編集部

