【お茶農家の現状】抹茶ブームの陰で苦しむ現場のリアルとは?

抹茶の世界的な人気は今や誰もが知るところですが、その陰で日本の茶農家は過酷な現実に直面しています。輸出額は過去最高を記録する一方で、農家は「作りたくても作れない」「収入が安定しない」といった課題を抱えています。

本記事では、抹茶農家の現場に焦点を当て、需要の急増と供給体制の崩壊というギャップに迫ります。

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急増する海外需要と、取り残される日本の茶農家

なぜ抹茶の人気が世界で高まっているのか?

世界中で抹茶の需要が急拡大しています。
日本の伝統的な飲み物だった抹茶は、いまやグローバルな健康ブームとビジュアル重視のトレンドに乗って、“スーパーフード”として脚光を浴びる存在となりました。

人気の理由は4つあります。

まず第一に、健康志向の高まりが挙げられます。抹茶は、抗酸化作用を持つカテキンやビタミン類、集中力を高めるカフェインを豊富に含んでおり、美容や免疫強化の観点から注目されています。コーヒーの代替品としても人気で、「カフェインの覚醒感は欲しいが胃に優しい飲み物がいい」というニーズにマッチしています。

次に、抹茶ラテやスイーツのトレンド化です。ミレニアル世代やZ世代を中心に、抹茶を使った飲料や菓子が人気を集めており、スターバックスをはじめとする海外大手カフェチェーンでも定番メニューとなっています。特に、鮮やかな緑の色合いが「インスタ映え」することから、SNSを通じた拡散力も抜群です。

また、抹茶を使った健康法やダイエット、美容レシピなどを海外のインフルエンサーが発信することによって、その需要はますます広がっています。「#matcha」のタグが付いた投稿はInstagramで1,000万件以上にのぼり、今や抹茶はグローバルなカルチャーアイコンになっているのです。

さらに追い風となっているのが、円安による輸出競争力の強化です。2024年の日本の緑茶輸出額は、前年比25%増の364億円に達し、うち抹茶が大部分を占めています。海外から見れば、日本産の高品質な抹茶が相対的に安く手に入る状況が続いており、業務用から個人消費までニーズが急増中です。

生産が追いつかず、農家の負担が限界に

抹茶の世界的な需要が拡大する一方で、日本の農家は供給の限界に直面しています。

ブームの恩恵があるとはいえ、実際に抹茶を生産する現場では「作りたくても作れない」状態が続いています。最大の理由は、生産体制が急増する需要に物理的・構造的に追いついていないからです。

まず、生産量を増やすためには新しい茶畑を整備する必要がありますが、抹茶用の茶木が収穫可能になるまでには最低でも5年かかります。その間はコストだけが先行し、収入にはつながらないため、多くの農家が増産に踏み切れずにいます。

さらに、抹茶の原料である碾茶(てんちゃ)は非常に手間のかかる工程で栽培・加工されます。茶畑には日光を遮るための覆いをかけ、手摘みや精密な管理が求められます。そして収穫後には、専用の碾茶工場での乾燥・粉砕という限られた施設での加工が必要。これらすべてのプロセスが時間と人手、設備を必要とし、農家が単独で対応できる範囲を超えているのです。

加えて、気候変動による打撃も深刻化しています。2023年~2024年にかけて、日本の主要茶産地では猛暑や干ばつの影響が大きく、茶樹の新芽が十分に育たず、生育途中で枯れてしまうケースも発生。愛知県や京都府では、農家によっては収穫量が前年に比べて2〜5割も減少したという報告もあります。

さらに、山間地に多い茶畑は機械化が難しく、ほとんどが手作業です。その担い手の多くは高齢者で、後継者も不足。「人手が足りない」「体力がもたない」という声が農家の間で広がっており、生産力そのものが今後ますます縮小する恐れがあります。

「「抹茶は儲かる」は幻想?お茶農家の赤裸々な声

安定しない収入、増えない給料

「抹茶ブームで農家も潤っている」――そう思われがちですが、実際は真逆です。

末吉製茶工房の代表・又木健文さんは、自身のnoteでこう語っています。

「お茶の会社を立ち上げて7年経った今も、繰越赤字のまま。自分の給料は月5万円がやっと。このままあと3年やってもダメなら、茶業を辞めようと決めました」

この言葉は、多くの茶農家の共通する“声にならない声”を代弁しています。抹茶の市場価格が上がっている一方で、農家の収入は増えていません。なぜなら、販売価格に見合った仕入れ価格が設定されていないからです。

また、輸出や国内販売においても、流通や小売、ブランド側に利益が集中し、農家は原料価格でしか報われない構造にあります。高品質の抹茶をつくるには多大な労力がかかるにもかかわらず、実際に手に入る利益は極めて少額。経費や人件費を差し引くと、赤字すれすれというケースも珍しくありません。

「抹茶農家=夢がある」は崩れつつある現実

かつては「自然の中で働ける」「文化に携われる」と憧れの職業だった抹茶農家。しかし、今やそのイメージも現実とはかけ離れています。

その背景には、いくつもの深刻な要因があります。

  • 機械が使えない急斜面の畑では、重労働が避けられない
  • 近年の猛暑や干ばつで、茶の木が病気になりやすく、葉も育ちにくい
  • 高齢化が進み、後継者が見つからない茶園が全国に増加中
  • 売上が少なく、金融機関からの融資すら受けにくい

とくに、茶の木を育てるには年単位の時間がかかり、成果がすぐに見えないことが若い世代の参入を妨げています。SNSやメディアで抹茶が華やかに取り上げられる一方で、現場では「もう体力が限界」「次の世代がいない」といった切実な悩みが渦巻いているのです。

高級抹茶が飛ぶように売れても、農家には恩恵なし?

ブランド茶商や小売が“利益の大半”を得る構造

京都・宇治をはじめとする名産地の抹茶が、かつてない高値で取引されています。

たとえば、2024年春の宇治茶市場では、抹茶の原料である碾茶が1kgあたり8,000円超(前年比170%増)という過去最高価格を記録しました。これは抹茶人気と世界的な品薄を反映したものですが、この価格がそのまま農家の収入になるわけではありません。

実際のところ、農家が受け取る価格はその一部に過ぎず、中間業者(卸・加工業者)やブランドを持つ茶商、小売店などが利益の大部分を持っていく構造になっています。

特に「宇治抹茶」「西尾抹茶」などの地理的ブランド(GI)や老舗ブランド力が重視される市場では、農家が自らブランド販売に乗り出すのは困難です。農協や市場経由での販売が主流となっており、農家はどうしても「原材料提供者」という立場から抜け出せないのです。

なぜ農家に利益が回らないのか?3つの理由

  1. 価格形成の透明性が低い:市場価格は高くても、流通・加工・ブレンドの段階で利益が積み上がり、農家には反映されにくい。
  2. 直販の壁が高い:農家が小売を始めようとしても、ブランディングや販売チャネル、資金力などの面で難易度が高い。
  3. ブランド重視の消費者心理:消費者は“老舗の名前”を求める傾向が強く、無名の農家ブランドは手に取られにくい。

農家の努力をつなぐには?希望を失わない挑戦も

少しずつ広がる希望の光

“抹茶農家=報われない”という状況が続く中でも、未来に向けた挑戦は各地で始まっています。

多くの農家が厳しい現実に直面する一方で、自ら販路を開拓したり、地域と連携して新たな収益モデルを構築する動きが少しずつ広がっています。その一つが、有機JAS認証の取得です。

これは、農薬や化学肥料を使用しない栽培方法で認証を受ける制度で、欧州や北米などの有機志向が強い国々への輸出拡大に貢献しています。認証を得ることで付加価値が高まり、「安全・高品質な日本産抹茶」として海外バイヤーからの信頼も獲得しやすくなります。

また、地元企業と連携して、自社ブランドの抹茶製品を開発する取り組みも活発化しています。抹茶チョコやクラフトドリンク、地域限定スイーツなど、“農家の名前が前面に出る”商品開発が進んでおり、これまで市場に埋もれていた小規模生産者が注目を集めるようになりました。

さらに、茶道や観光体験と結びつけた「体験型販売」も、インバウンド需要を活かす形で再評価されています。たとえば、観光客に自園の抹茶を提供し、茶摘みや手もみ体験を通じて直接購入につなげる取り組みは、収益だけでなく「農家と消費者の関係性」を深める意味でも重要です。

加えて、カーボンクレジットの活用という新たな収入源にも注目が集まっています。茶畑のCO₂吸収能力を環境価値として“見える化”し、環境配慮型ビジネスとしての価値を企業に提供することで、農業経営の多角化を目指す動きが広がっています。

実例:持続可能なモデルを創る挑戦者たち

TeaRoom(東京 × 静岡)
裏千家出身の若手経営者が立ち上げたベンチャー企業で、静岡の本山地域にある日本茶工場を承継。有機栽培や茶道文化と連動したマーケティングで、農家とともに持続可能な事業モデルを構築中。

静岡オーガニック抹茶
有機JAS認証を取得し、海外バイヤー向けに直販。農家×輸出商×加工業者が利益を分け合う「三方よし」の仕組みが注目されています。

いずれも共通しているのは、農家が単なる“原材料供給者”にとどまらず、流通やブランディングまで積極的に関わっている点です。これにより、収益性の向上だけでなく、自らの栽培や仕事に誇りを取り戻す農家も増えてきています。

抹茶農家の未来を守るには、消費者の理解が必要

抹茶の未来を支える鍵は、消費者である「私たち」にあります。

いま、抹茶を楽しむ世界中の人々が、その豊かな味わいや文化的価値を称賛しています。しかし、その背景には、気候変動や過酷な労働、高齢化と闘いながら日々茶畑を守り続けている農家の存在があることを、忘れてはいけません。

農家の多くは、品質へのこだわりを持ち、丁寧な仕事を積み重ねています。それでも現状では、流通構造や価格の不均衡により生活が成り立たないケースも少なくありません。こうした構造を変えていくには、消費者の選択と理解が欠かせないのです。

私たちにできる3つのこと

  1. 安価な“なんちゃって抹茶”より、信頼できる国産・農家直送品を選ぶ
     → 安さだけを求めず、品質と生産者へのリスペクトを込めた購買行動を。
  2. SNSで農家や産地の活動を応援・拡散する
     → フォロー・シェア・いいねなど小さなアクションでも、農家の励みになります。
  3. 茶畑のある地域に足を運び、現地の抹茶を体験する
     → 茶摘みや茶道体験などを通じて、文化と農の現場をつなぐリアルな消費を。

抹茶タイムズでより深い理解を

抹茶タイムズでは、抹茶の魅力だけでなく、その生産現場で起きている課題や変化、そして未来への挑戦についても丁寧に伝えています。
「おいしい」の裏側にあるリアルを知ることが、より深い抹茶体験につながるはずです。

まとめ|抹茶農家の現状を知り、未来をつなぐ行動を

今、日本の抹茶農家はブームの裏で厳しい選択を迫られています。
高級抹茶が注目される一方で、農家は価格と生産コストの板挟みに。加えて気候変動や高齢化が拍車をかけ、後継者の未来も危ういのです。

私たち消費者の選択が、茶業の未来を左右します。

LINE
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