抹茶の輸出は簡単じゃない?FDA・EU規制と認証がブランドに与える影響

世界中で「MATCHA」という言葉が浸透し、スーパーフードとしての地位を確立した抹茶。日本の輸出額も過去最高を記録し、北米や欧州を中心に需要が拡大しています。しかし、いざ輸出に挑戦しようとすると、多くのブランドが直面するのが「規制」「認証」「表示ルール」といった見えない壁です。
米国FDA、EUの食品規制、有機認証の要件は想像以上に厳しく、単なる物流の問題にとどまらず、ブランド戦略や価格設計そのものを左右する要素となっています。本記事では、抹茶輸出の現状から規制の具体例、さらにブランドに与える影響までを掘り下げて解説します。

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世界が欲しがる「MATCHA」と日本の輸出現状

抹茶は今や単なる日本文化の象徴にとどまらず、健康・美容・サステナブル消費を象徴するグローバルな食品カテゴリーに成長しました。

  • 農林水産省の統計によると、2024年の抹茶輸出額は過去最高を更新。特に米国・EUが牽引役。
  • アメリカでは「抹茶ラテ」がスターバックスをはじめ大手チェーンに定着し、スーパーやドラッグストアにも広がっている。
  • 欧州では「オーガニック」「ビーガン」トレンドと結びつき、プレミアムな食品素材として位置づけられている。

しかし、需要があるからといって誰でも簡単に輸出できるわけではありません。 実際には、厳しい規制をクリアしなければ市場に立つことすらできないのです。

アメリカ市場の最大関門=FDA規制

アメリカは世界最大級の抹茶需要を持つ市場ですが、実際に輸出する企業にとっては「需要がある=売れる」とは限りません。最大の壁として立ちはだかるのが FDA(米国食品医薬品局)による規制 です。抹茶は「茶葉」ではなく「食品」として輸入対象に分類されるため、日本国内の基準を満たしていても、FDA基準をクリアできなければ市場に到達する前に止められてしまいます。

輸出前に必須となる登録と監査

アメリカ市場を目指すなら、まず回避できないのが以下の制度です。

食品施設登録(Food Facility Registration)

日本の製茶工場や輸出業者は必ずFDAに施設登録を行う必要があります。未登録では輸入そのものが認められず、たとえ現地パートナーを通じて販売しようとしても、税関で止まってしまいます。登録情報は毎年更新が求められるため「一度登録すれば終わり」ではない点も注意が必要です。

FSVP(Foreign Supplier Verification Program)

米国の輸入者が外国の供給業者を監査・検証する仕組みです。製造工程やHACCP(危害分析重要管理点)、トレーサビリティの体制まで求められるため、小規模な茶農家や製茶所ではハードルが非常に高いのが現実です。日本の「衛生管理レベル」だけでは不十分で、米国基準に合わせた監査体制を構築しなければなりません。

FSMA(食品安全強化法)への対応

2011年以降、FSMAの導入により、輸入食品全般の規制が強化されました。抹茶も例外ではなく、農薬残留や異物混入を未然に防ぐためのリスク管理体制が必須です。つまり、「安全に作っている」という自己申告だけでは通用せず、文書化・検証・記録の3点セットが求められます。

ポイントは、「日本国内で食品安全基準を満たしていても、それだけでは米国輸出の切符にならない」 ということです。輸出経験が浅い事業者がここでつまずき、事業化を断念するケースも少なくありません。

ラベルと成分表示がブランドを左右する

アメリカ市場において「ラベル表示」は単なる包装デザインではなく、ブランド信頼性を左右する戦略的要素 です。

  • 栄養成分表示(Nutrition Facts Panel)の義務化
    アメリカではすべての食品に「Nutrition Facts」の表示が義務付けられています。抹茶の場合、カフェイン含有量の記載を求められるケースも増加しています。これは健康志向が高まる米国市場特有のニーズであり、消費者からの信頼獲得につながる一方、不備があれば即座に違反対象となります。
  • 健康表示の規制
    「抗酸化」「デトックス」「ダイエット効果」といった表現は、日本のマーケティングでは一般的ですが、米国ではFDAの監視下に置かれるグレーゾーンです。科学的根拠を示せないまま使用すると、違反警告を受け、最悪の場合は「無許可の医薬品扱い」となって販売停止に追い込まれるリスクがあります。
  • 言語と翻訳の問題
    日本語のままでは当然NGで、英語で正確に翻訳された表示が必須です。例えば「宇治抹茶」を「Uji Matcha」と表記する際も、原産地証明の裏付けがなければただの“誤解を招く表示”と判断されます。ここを軽視するとブランドイメージを大きく損ねる結果となります。

アメリカでは「ラベル=マーケティング」。美しいパッケージデザイン以上に、法的に正しい情報の提示がブランドの信用を支えるのです。

トラブル事例から学ぶ

実際にFDA規制を軽視したことで発生したトラブルは少なくありません。

Danger
Danger
Danger

アメリカ市場においては、「表示の正確性=ブランドの信頼度」を決定づける要素であり、軽視すれば市場参入どころか撤退に追い込まれるリスクさえあるのです。

Uはさらに厳しい?残留農薬と有機認証の壁

アメリカFDAの規制も難関ですが、EU(欧州連合)はさらに高いハードルを課していると言われます。特に大きな壁となるのが「残留農薬の基準値」と「有機認証制度」です。

世界でも最も厳しいレベルの残留農薬基準

EUは「食品・飼料に関する一般食品法規則(Regulation (EC) No 178/2002)」や「残留農薬規則(Regulation (EC) No 396/2005)」に基づき、各農薬の最大残留基準値(MRL: Maximum Residue Levels)を設定しています。
この基準値は日本の基準値より数倍~数十倍も厳しいケースがあり、特に茶葉や抹茶は乾燥粉末で摂取量が濃縮されるため、輸出時に検査で弾かれるリスクが高くなります。

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このため、日本国内では問題ない抹茶でも、EUで販売できないケースが少なくありません。

有機認証(EUオーガニック)の取得ハードル

もう一つの壁が、EU市場で販売する際に消費者から強く求められる「有機認証(EU Organic)」です。
EU規則「Regulation (EU) 2018/848」により、EU域内で「オーガニック」「有機」と表示するには、EUの認証基準を満たす必要があります。

日本のJAS有機認証だけでは「EU Organic」として販売できない(相互認証は存在するが、検査プロセスや追加手続きが必須)。

認証機関による現地審査やトレーサビリティ管理が必要。製造・輸送・保管まで含めて全工程が追跡可能でなければならない。

年次の監査が入り、違反があれば認証取り消しや販売停止措置。

特に中小規模の茶農家や新興ブランドにとっては、認証取得コストと運用コストが大きな負担となります。

消費者意識の高さがブランド戦略に影響

EU市場の消費者は環境意識やサステナビリティへの関心が強く、「オーガニック認証がない=信頼できない」とみなされやすい傾向があります。
そのため、規制遵守だけでなく、「EU有機マーク(緑色の葉のシンボル)」を取得すること自体がブランド価値
につながります。

実際にEUで成功している日本茶ブランドは、

  • 有機栽培を前提とした専用農園の確保
  • EUオーガニック認証を取得した加工場との連携
  • サステナブルなストーリーテリング(環境配慮・農家支援・CO2削減)
    といった戦略を取り入れています。

認証と規制がブランド戦略に与える影響

規制や認証は単なる「参入条件」にとどまらず、海外でのブランド戦略そのものに大きな影響を及ぼします。特にコスト構造、信頼性、競争環境の3つに直結する点が重要です。

コスト増大と価格設計への影響

海外輸出に必要な規制対応は、想像以上にコストを押し上げます。

たとえば:

農薬・重金属検査

アメリカ向けではUSDA基準、EU向けではEU Residue Limitsに準拠するため、1ロットごとに外部検査機関へ数十万〜百万円規模の検査費が発生することもあります。

輸送と検疫対応

港での検査や輸送中の温度管理を徹底する必要があり、冷蔵・冷凍物流コストが追加。

書類・翻訳対応

輸出国の言語で成分表やオーガニック認証マークを表示する義務があり、ラベル刷新や翻訳、規格適合テストも必要。

年次監査費用

USDA OrganicやEU Organicでは、年に一度の監査が必須で、監査費+書類整備で数百万円単位の追加費用。

これらを合算すると、年間で数百万〜数千万円規模の固定コストが生じるケースも珍しくありません。そのため、小規模ブランドでは採算ラインに乗せるのが難しく、輸出を断念せざるを得ないこともあります。

信頼と高単価展開のチャンス

一方で、認証を取得できれば強力な武器となります。

Success
Success
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つまり、コスト負担を乗り越えられる企業にとっては、むしろブランドの差別化要因となり、長期的には収益性を押し上げる可能性が高いのです。

中小ブランドの撤退と大手の寡占化リスク

ただし、この仕組みは市場構造の二極化を招きます。

  • 中小ブランドの撤退
     規制強化の波に耐えられない小規模事業者が輸出を断念し、国内市場専業に追い込まれるケースが増加。
  • 大手企業の寡占化
     伊藤園や丸久小山園のように既に海外拠点や有機認証体制を整えている大手ほど優位性が高まり、市場を寡占化していくリスクがあります。
  • 参入障壁の上昇
     新規ブランドにとっては「参入コストが高すぎる」状況となり、イノベーションが阻害される懸念も指摘されています。

実際に、北米市場ではUSDA Organic認証を取得した日本茶ブランドは限られており、認証を持たない小規模ブランドはAmazonや一部オンライン販売に留まっている状況です。

突破口となる戦略

では、中小規模ブランドや新興D2Cがどう輸出に挑戦できるのでしょうか?

越境ECでのテストマーケティング

  • AmazonやShopifyを使えば、FDA・EU規制を完全にクリアする前でも小規模販売が可能。
  • 実際の消費者レビューやニーズを確認しつつ、規制対応を並行できる。

現地パートナー・専門商社との連携

  • 規制対応を熟知した輸入業者・商社と組むことで、ハードルを大幅に下げられる。
  • 特に米国では、FSVP対応を現地輸入者が担う仕組みを活用するのが有効。

認証を武器にブランド化

  • 有機・サステナブル認証を単なる「参入条件」ではなく「ブランドストーリー」に昇華させる。
  • 「環境に配慮した日本の茶畑から世界へ」という物語が、欧米消費者の共感を生む。

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まとめ|輸出は規制との戦い、その先にブランドの未来がある

これからの抹茶輸出は、「規制対応力=ブランド力」 の時代に突入した。

抹茶需要は確実に拡大しているが、輸出にはFDA・EU規制という高い壁がある。

規制対応は単なるコストではなく、ブランド信頼性を高める投資。

生き残れるのは「規制を突破し、認証をブランド力に変換できるプレイヤー」。

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