CoCoStar 株式会社 代表取締役 永田 祐一郎氏インタビュー

プロフィール

永田 祐一郎(ながた・ゆういちろう)/CoCoStar 株式会社 代表取締役

2007 年にソフトバンクテレコム株式会社へ入社後、通信業界の代理店でトップセールスを記録。わずか 3 か月で課長、8 か月で部長 に抜擢された実績を持つ。その後 2012 年に Creazioen 株式会社を設立し、現在は社名変更をして CoCoStar株式会社 を率いている。

Q1.これまで人を「褒める」という革新的なサービスで5,000人以上を褒めてこられましたが、最初に「人を褒めること」に喜びを感じた瞬間を教えてください。

やっぱり、泣いたり、或いはすごく共感をしていただいたりとか、そういう時は本当に嬉しいですし、前にあったんですけど、例えば中年の男性の方が、いろいろ苦しんでいたんですけど、永田さんに出会って心境が変わってきましたとか、切り替えられましたとか、ラグビーのプロ選手がもう潮時なのかなとか、自分自身に限界を感じてたんですけど、自分が褒めたことによってかは分からないんですけど、永田さんのおかげですごく元気になりましたって、生き生きしていて、そういう姿を見た時に、本当に継続してやってきて良かったなと感じました。

Q2.営業トップから新規事業への思い切った転身には、どのような背景があったのでしょうか?

「もともと自分にあまり自信がなくて、「すごい人間になりたい」と肩書きにこだわっていました。営業トップを3か月で取り、さらに支店長になり、自分で会社も立ち上げてある程度は稼げていたんです。

でも、やればやるほどメンタルが削られていき、「自分は何のために生きているんだろう」と感じる瞬間がありました。ゼロイチのサービスを作ったりもしましたが、大きく失敗してしまい、それが転機になりました。加えてコロナ禍も大きなきっかけでした。活動がすべて止まり、今までの仕事を全部やめて「本当にやりたかったことは何だろう」と立ち返る時間ができたんです。

その頃たまたまBNI(経営者交流会)に入りました。人間関係で騙された経験もあって最初は怖かったんですが、BNIの仲間に出会って少しずつ変わっていきました。そこにいた人が開いていたサロンの茶会に参加して、茶道に触れたことも大きいですね。

それまでは「何かを達成したから幸せ」という外的な価値観、いわば西洋的な考え方が自分の中で大事でした。でも茶道を通じて「自分と向き合う」ことの大切さを知りました。お点前って鏡みたいなんです。心がフワフワしていると水をこぼしたり、道具をガタンと当てたりします。毎回同じ手順なのに、心が違えば結果も違う。それが面白くて続けています。

Q3. 短い時間で初めて会った相手を褒めるとき、「見る」「聞く」「言葉にする」-この3つをどんな順番とコツでやっていますか?

私がここ数年で強く感じたのは、「人は基本的に嘘をつけない」という前提です。だからこそ私は「相手の雰囲気」をとても信じています。会話しながら相手の声色や表情を感じ取り、「ああ、この人はこういうタイプなんだな」とまず仮説を立てるんです。

そのうえで、友だち同士やカップルで来ている場合は、同行者に「ふだんはどんな人?」と聞きます。仕事や活動内容も尋ねてから褒めるようにしています。想像だけで褒めるより、こうして裏づけを取ったほうが現実味があってうれしいんですよね。

こうすると褒められる側は二度楽しめます。友人(あるいは恋人)からも認められ、さらに見知らぬ私からも認められる。もし完全に初対面で情報がゼロなら、簡単なヒアリングを挟みます。茶室バージョンでは「今、ここで感じていること」「最近の良かったこと・大変だったこと」を5〜10分じっくり聞いてから褒めます。ここはエンタメではなく、カウンセリング寄りのゆったりした褒めです。

路上やTikTok向けはテンポ重視のエンタメ褒めをしています。一方で茶室では静かに寄り添いながら褒める。相手が本当に悩んでいるなら声を落として熱を込める …そんなふうに、ケースバイケースで語り口や空気感を変えています。

Q4.「褒める文化」を組織に根づかせるうえで最大のハードルは何でしょうか。また、それを茶文化がどう後押しできると考えますか?

経営者はとにかく「利益が上がればそれで OK」という発想に陥りがちですが、いま求められているのは順番の逆転です。まず社員のウェルビーイングと満足度を高めること。そうすれば自然に売上も利益も伸びる 。この仕組みづくりこそがいまの時代に合った経営だと私は考えています。実際、ソニーでは平井和夫氏が社長に就任した際、人の気持ちを理解できるリーダーを管理職に抜擢し、業績が急回復しました。「数字より人を優先しても、きちんと利益は出せる」という大企業の成功例が示す通り、社員の心を整えることが経営の土台になるのです。

そこで鍵になるのが茶文化と「褒める」仕組みの掛け合わせです。茶室は静かに自分と向き合い、呼吸を整えられる場。そこで抹茶を一服し、お互いを褒め合う…そんな時間を社員同士で共有すれば、相互理解とエンゲージメントがぐっと高まります。人は褒められると前向きになり、「お客様のためにもっと動こう」と自然に行動が変わるものです。逆に怒りや恐怖が支配する職場では、失敗を恐れて挑戦が生まれません。だからこそ人を褒める文化を根付かせ、安心してチャレンジできる組織にすることが、結果として利益を最大化する最短ルートになると私は思います。

5.訪日外国人向けの茶道教室にも参加された経験があると拝見しました。言語が通じない分、「褒める」ことが難しいように感じるのですが、日本人と外国人によるリアクションの差で何か気づいたことはありますか?

正直に言うと、外国人の方とご一緒する機会は結構あるんですが、僕自身は英語を話せません。だから細かいニュアンスは通訳さん次第というか、正直よく分からない部分もあります。
それでも茶道体験に来られる方は、日本語を勉強しに来ていて、日本文化の一環として30分くらい茶道を体験するんです。皆さんその場が本当に楽しそうで、日本人より日本の歴史や文化が好きなんじゃないか、と思うくらい熱心なんですよ。

茶道という文化を通じて、国籍を超えて一つになれる瞬間があるのがとても感動的ですね。言葉が完璧じゃなくても、茶室での無言の時間や所作を共有することで、無意識に国境を越えてつながっているという感覚が僕は大好きなんです。

Q6.今後の「茶文化」と「褒める文化」について、永田さんの中長期的なビジョンについてお聞かせ願います。

いまはエンタメ色の強い企画が中心ですが、将来的には企業や学校にも取り入れてもらい、参加した人がリラックスしながら「自分はこのままで大丈夫だ」と感じられる場を増やしたいと考えています。ロボットや AI が普及し、ベーシックインカムが現実味を帯びるこれからの時代は、「いくら稼ぐか」よりも「どう生きるか」が問われるはずです。その指針は、日本の茶道や日本舞踊といった伝統文化の中にあると信じていて、私自身も茶道や日本舞踊を通じて内面を磨く時間を大切にしています。

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編集後記

取材中、永田祐一郎さんは終始リラックスした笑顔で「褒める」力を実演してくれた。すかさずさりげなく褒めて場を和ませるその姿は、こちらの背筋がふっとゆるむ感覚を体験した。取材を終えて感じたのは、「褒める×茶文化」という一見意外な組み合わせが、実は組織マネジメントや教育現場にとってリアルなソリューションになり得るということ。エンタメからはじまり、企業・学校へ──永田さんの挑戦がどこまで広がるのか、次の一歩を追いかけるのが今から楽しみだ。

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