脱コモディティ化戦略|“どこのお茶か”を売りにするプレミアム化の潮流
お茶市場は長年、価格競争によって「どれでも同じ」と見なされやすいコモディティ商品として扱われてきました。しかし近年は、「どこのお茶か」という産地やストーリーに価値を見出すプレミアム化の潮流が広がっています。宇治茶や八女茶、西尾抹茶などの地域ブランドが再評価され、観光やギフト需要、さらには海外市場でのジャパンブランド戦略にも直結するようになりました。
本記事では、なぜお茶がコモディティ化しやすいのか、その背景を整理するとともに、プレミアム化の市場機会や成功事例を紹介します。さらに、GI(地理的表示保護制度)や産地ストーリーの活用、BtoBにおける導入メリットなど、実務で役立つプレミアム戦略のステップをわかりやすく解説します。
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なぜお茶市場はコモディティ化しやすいのか

日本のお茶市場は、長年にわたり「価格競争」によって価値が埋没してきました。大量生産と効率的な流通網の整備により、お茶は「どの商品を選んでも大差ない」という認識が広がり、差別化の余地が小さい商品=コモディティとして扱われやすくなったのです。
特に1990年代以降、ペットボトル緑茶の普及が市場を拡大させた一方で、品質よりも「手軽さ」と「安さ」が優先されるようになりました。結果的に、消費者はお茶を「日常的で安価な飲み物」と捉える傾向が強まり、ブランドや産地の個性が埋没してしまいました。
さらに、輸入茶との競合や流通大手のプライベートブランド(PB)戦略が追い打ちをかけています。中国やベトナムから安価に輸入される茶葉は、大手飲料メーカーやPB商品の原料として利用され、国産茶葉との価格差を顕著にしました。スーパーやコンビニの棚に並ぶPB緑茶は「低価格かつ一定品質」を武器に消費者を獲得し、結果として国産ブランド茶は価格競争に巻き込まれる構図が定着しています。
この流れは生産現場にも影響を与えています。農家は市場価格に押し下げられ、十分な収益を確保できず、後継者不足や生産縮小といった構造的課題を抱えるようになりました。加えて、消費者の間に「お茶はどれも同じ」といった認識が固定化しているため、ブランド力を築くのが難しい状況です。
つまり、日本茶市場がコモディティ化しやすいのは、
といった複合要因が背景にあるのです。
プレミアム化の潮流と市場機会

“どこのお茶か”が選ばれる時代に
近年、消費者は単なる「お茶」というカテゴリーではなく、「どの土地で育ったか」「誰が作ったか」という背景に価値を見出すようになっています。これはコーヒー市場で広がった「シングルオリジン」の潮流と同じ構造で、品質だけでなくストーリーや生産地のアイデンティティが購買理由につながるのです。
宇治茶・八女茶・西尾抹茶など、日本各地の産地ブランドの再評価が進み、ラベルに地域名が記されているだけで「品質が保証されている」という安心感を与えます。特に訪日観光客や海外市場では、“Japan Tea”全体のブランド力に加え、「Kyoto」「Uji」「Shizuoka」など地名そのものがプレミアムの証として通用しています。
つまり市場は、「どの商品を選ぶか」から「どの土地の物語を選ぶか」へと変化しており、これが今後のお茶ビジネスの大きな機会となっています。
成功事例にみるプレミアム化の効果

海外高級カフェでの宇治抹茶採用
ニューヨークやパリのカフェでは、京都宇治の高級抹茶を使ったラテやスイーツがプレミアムメニューとして展開されています。観光客や現地の富裕層に「本物の抹茶」として支持され、地域ブランドが国際的に認知される事例となっています。

八女茶を前面に出したギフト商品の拡販
国内百貨店やECサイトでは、「八女茶」の名を冠した高級ギフトセットが人気を集めています。お歳暮や海外向けの贈答用として需要が高まり、「産地の名前自体が付加価値」となっている好例です。

テロワール訴求による観光集客
日本茶専門店や観光施設では、「〇〇の茶畑で採れた一番茶」「霧深い山間地で育まれた限定煎茶」といったテロワール訴求が来店動機につながっています。特に訪日外国人にとっては、土地に根ざしたストーリーが観光体験と結びつき、購買意欲を高める要素となっています。
産地ブランドを活かす実務戦略

お茶をプレミアム商品として位置づけるためには、単に「高級感」を打ち出すだけでは不十分です。制度・物語・体験を組み合わせた総合的な戦略設計が不可欠です。以下では、実務に直結する具体的な手法をご紹介します。
GI(地理的表示保護制度)の活用
すでに「宇治茶」や「八女伝統本玉露」など、一部のお茶はGI(地理的表示保護制度)に登録されています。これは、地域特有の自然条件や伝統製法によって生まれる品質を「知的財産」として守る仕組みです。
GI登録は模倣や不正流通を防ぐだけでなく、輸出時にも「信頼性の証」として大きな効果を発揮します。ワインやチーズのように「GIラベル付き商品」が世界市場で高値で取引されるのと同じように、日本茶ブランドも差別化を図ることができます。
産地ストーリーの組み込み
現代の消費者は「背景の物語」に共感して商品を選ぶ傾向があります。例えば、
「霧深い山間で代々続く茶園で育てた茶葉」
「江戸時代から続く伝統的な蒸し製法」
といったストーリーをパッケージ・販促ツール・SNS発信に組み込むことで、商品自体に物語的価値を付与できます。
特に訪日観光客や海外市場では、単なる味や価格以上に「文化や歴史を体験できる商品」としての魅力が購買動機に直結します。
契約栽培・限定ロットの導入
市場にあふれる「大量生産茶」と差別化するためには、契約農家との提携や限定ロットの活用が効果的です。数量を絞ることで「希少性」が生まれ、消費者にとって「今しか買えない」「特別に選ばれたお茶」と認識されます。
この希少性はプレミアム価格を正当化する根拠となり、価格競争からの脱却につながります。ワイン市場における「限定ヴィンテージ」のように、お茶でもストック型商品から投資型商品へと変化させることが可能です。
地域観光との連携
お茶を「飲む」だけでなく、「体験」として楽しんでもらうこともブランド価値を高めます。
といった地域観光と結びつけることで、消費者は「その土地の思い出」と一緒に商品を購入します。結果として、産地ブランドが“旅の体験”と結びついた強い記憶資産となり、リピートやSNS拡散を促進します。
BtoB事業者にとってのメリット
お茶のプレミアム化は、生産者や観光業にとどまらず、小売・外食産業・輸出事業者にとっても大きなメリットをもたらします。特にBtoBの現場では「差別化」「利益改善」「海外競争力」の3点が顕著に表れます。
差別化商材の提供
外食チェーンや小売事業者にとって、競合との差別化は常に課題です。ここで「どこの茶葉か」を前面に出すことは、わかりやすい差別化要素となります。
このように、産地名そのものが商品価値となり、顧客に選ばれる理由を作ることができます。
粗利改善につながる
コモディティ化した商品は価格競争に巻き込まれ、結果的に利益率が低下します。一方で、産地ブランドを打ち出した商品は「高くても買う」動機を顧客に与えるため、安売りせずに販売できます。
実際に、限定農園の茶葉やGI認証を取得したお茶は、スーパーやECで通常商品より1.5〜2倍の価格でも売れるケースがあります。つまりプレミアム化は、BtoB取引の粗利率改善=経営の安定化につながるのです。
海外市場での競争優位性
輸出市場においては、「Japan」「Kyoto」「Matcha」といったキーワードが強力なブランド資産になります。海外バイヤーや消費者にとって「どこのお茶か」が信頼性の判断基準となり、単なる緑茶ではなく“ジャパンブランド”として評価されます。
たとえば、ニューヨークの高級カフェでは「Uji Matcha」という表記だけで消費者の購買意欲を高め、価格設定も現地の一般的なお茶の2〜3倍で成立しています。BtoB事業者にとっては、輸出先でのブランド確立がそのまま長期的な競争優位となるのです。
→ つまり、プレミアム化戦略を導入することは、BtoB事業者にとって 「顧客に選ばれる理由を作り、利益を守り、海外で戦える武器を手にする」 ことを意味します。
導入ステップ|プレミアム戦略を実務に落とし込む
プレミアム化は理念やスローガンだけでは実現できません。実際のビジネス現場で効果を発揮するためには、段階的なステップを踏み、制度・ストーリー・契約・認証を組み合わせて進めることが重要です。
① 自社商品のコモディティ化リスクを診断
まずは、自社の商品が「代替されやすい」状況にあるかどうかを客観的に評価します。
- 価格比較されやすい商品か
- PB商品や輸入茶で置き換えられていないか
- 顧客が「どれでもいい」と感じていないか
こうした診断を行うことで、プレミアム化が必要な領域と、その優先順位が見えてきます。
② 訴求できる産地・ストーリーの検討
次に、自社が扱うお茶の中で、どの産地を前面に打ち出すとブランド価値が高まるのかを検討します。
- 宇治や八女といった知名度のあるブランドを強調する
- 小規模農園や独自製法など、唯一無二のストーリーを構築する
この段階で「選ばれる理由」を明確にし、パッケージや販促の方向性を決めます。
③ 契約やブランド戦略に組み込む
戦略を単なるマーケティング施策に留めず、OEM先・販売先との契約に反映させることが重要です。
- 契約書に「産地名を明示して販売する」条件を盛り込む
- 大量仕入れによる値崩れを防ぐために限定ロットを設定する
これにより、取引先が安売りに走るリスクを抑え、ブランド価値を守れます。
④ 輸出市場での信頼性強化
海外市場で成功するためには、認証の取得が欠かせません。
- GI認証(地理的表示保護制度) → 産地ブランドを守り、模倣を防止
- 有機認証(JAS・USDA Organicなど) → 健康志向市場での信頼性を担保
特に欧米市場では「認証マークの有無」が購買の判断基準となることが多いため、早い段階での取得が推奨されます。
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まとめ|“産地を売る”ことがブランドを守る
お茶市場が抱える最大の課題は、コモディティ化による価値の埋没です。価格だけで比較される商品は、必然的に利益を削り、ブランドの持続可能性を奪ってしまいます。その最短の回避策こそが、「どこのお茶か」を語り、産地を前面に打ち出すことです。
プレミアム化の潮流はすでに国内外で進んでおり、今後も加速することは間違いありません。宇治や八女、西尾といった地域ブランドはもちろん、小規模農園や限定ロットも「選ばれる理由」となり得ます。消費者は今、商品そのもの以上に“背景の物語”に価値を見出しているのです。
BtoB事業者にとっては、この変化を戦略に取り込むことで、
- 粗利改善(安売り競争からの脱却)
- 競争優位性の確立(差別化された商材の提供)
- 海外展開の強化(「Japan Tea」としての国際的ブランド力)
という3つの成果を同時に実現できます。
つまり、産地を売ることこそがブランドを守る最も確実な手段であり、未来の成長を支えるカギなのです。
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