茶園のDX事例|ドローン・センサーが変える収穫と品質管理

茶園の現場にもデジタル化の波が押し寄せています。
ドローンで生育状況を上空から可視化し、センサーで土壌や水分をリアルタイム監視──これまで勘と経験に頼っていた作業が、データとAIによって“見える化”されつつあります。

本記事では、茶園DX(デジタルトランスフォーメーション)の最新事例を紹介し、ドローンやIoTセンサーがどのように収穫時期の判定や品質管理に役立つのかをわかりやすく解説します。
「人手不足を補いたい」「品質バラつきをなくしたい」「輸出向けの安定供給体制を整えたい」と考える茶農家・事業者にとって、必読の内容です。

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なぜ今、茶園にDXが求められるのか

日本の茶産業は、高齢化と後継者不足という二重の課題に直面しています。基幹的農業従事者の平均年齢は67歳を超え、茶農家数は年々減少。1戸あたりの耕作面積は拡大しているものの、人手不足で十分に管理できず、収穫ロスや品質低下を招くケースも増えています。

さらに、気候変動による収穫時期の不安定化も深刻です。春先の高温や霜害によって一番茶の萌芽が例年より早まったり遅れたりすることで、労働力の配置計画が乱れ、摘採のタイミングを逃して品質が落ちるリスクが高まっています。
OEM契約や輸出市場では、規格外やバラつきの多い原料は受け入れられないため、「安定した品質・安定した供給」がこれまで以上に重要になっています。

こうした課題を解決する鍵がデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

  • ドローンで生育状況を可視化し、葉色指数(NDVI)から肥料ムラや病害兆候を早期に把握
  • IoTセンサーで土壌水分・温湿度をリアルタイム監視し、被覆開閉やかん水のタイミングを自動制御
  • AI解析による収穫時期判定で、労働力を集中的に投入

これらの仕組みを組み合わせることで、限られた人手でも高品質なお茶を効率的に生産できる“スマート茶園”が実現します。

農林水産省も「みどり戦略」でデータ駆動型農業の普及を掲げ、各県ではドローン導入補助やセンサー設置支援、スマート農業研修などが加速。2025年以降は「茶業DX推進協議会」などの地域連携も強化されており、今がまさに導入の好機です。

ドローン活用による生育状況の可視化

ドローンは、茶園DXの中でも導入効果が分かりやすい技術です。上空から茶園をスキャンすることで、従来では難しかった広範囲の生育状況を短時間で“見える化”できます。人力での巡回では見落としがちな生育ムラや病害の兆候も、データとして把握可能になります。

マルチスペクトルカメラで葉色・病害を把握

ドローンに搭載したマルチスペクトルカメラは、肉眼では見えない光の波長を捉えて解析します。

  • NDVI(正規化植生指数)によって葉色や生育状態を数値化
  • 肥料過多・不足による生育ムラやストレスを早期に検知
  • 病害虫の発生初期兆候をAIが抽出

これにより、農薬や肥料を必要なエリアにだけピンポイントで散布でき、資材コストを削減しつつ環境負荷も低減できます。実証事例では、ドローン活用により施肥量を10〜15%削減できた例もあります。

収穫適期の判定

ドローンの撮影データは、AI解析と組み合わせることで摘採適期を科学的に予測できます。

  • 葉色の変化、日射量、気温データを統合して生育曲線をモデル化
  • 最も旨味成分(テアニン)が高まるタイミングを算出
  • ピーク時に作業者を集中投入できるようスケジューリング

これにより、早刈りや遅刈りによる品質低下を防止し、収量も最大化。人手不足の茶園でも効率的に労働力を割り振れるため、結果的に収益性の向上につながります。

IoTセンサーによる品質管理

茶園における品質の安定は、収穫前後の環境管理に大きく左右されます。ここで活躍するのがIoTセンサーです。圃場や工場に設置したセンサーからデータを常時収集し、スマホやPCでリアルタイムに確認できることで、「勘と経験」頼みだった栽培管理をデータに基づく意思決定へと変えます。

土壌・水分センサー

茶の旨味を左右するテアニンやアミノ酸含有量は、土壌水分・養分のバランスと覆い下栽培の管理に強く影響されます。
IoTセンサーを導入すると、以下のような管理が可能です。

  • 土壌水分・EC値(電気伝導度)・養分濃度のリアルタイム把握
  • 降雨データと連動したかん水の自動制御
  • 温湿度センサーと連動した被覆開閉の自動化

これにより、栽培環境を常に最適化できるため、甘味と香りが際立つ高品質な一番茶を狙った生産が可能になります。
導入農園の事例では、被覆開閉のタイミング調整により、テアニン含有量が10〜15%向上したケースも報告されています。

収穫後〜出荷までのデータ連携

高品質なお茶をつくるには、収穫後の管理も重要です。

  • 温湿度ロガーで荒茶保管庫の環境を監視し、酸化や風味劣化を防止
  • ロットごとの生産履歴・温湿度データをクラウド上で一元管理
  • 出荷時には自動で規格書・COA(分析証明書)を生成

これにより、OEM先や輸出先に求められるトレーサビリティ(生産履歴追跡)を高い精度で実現できます。近年、海外市場では食品安全認証(ISO22000、FSSC22000)やロット管理の要求が厳格化しており、データ連携は輸出ビジネスの必須条件になりつつあります。

導入事例と効果

DXは机上の理論ではなく、すでに茶産地で成果を上げています。鹿児島県や静岡県では、ドローン×AI解析による収量予測システムを導入した茶農協が増えています。これにより、次のような効果が報告されています。

  • 出荷計画の精度向上
    ドローン画像から生育状況を解析し、収量を事前に予測。茶工場の稼働計画や人員配置を前もって調整できるため、繁忙期でもスムーズに処理できる体制を構築。
  • 品質バラつきの低減
    肥料ムラや病害を早期発見・是正することで、茶葉の色・香り・味の安定性が向上。海外向け輸出茶葉では、規格外ロス率が従来比で20%以上削減された事例もあります。
  • 輸出用OEM契約での信頼向上
    COA(分析証明書)や規格書のデータをロット単位で一貫して発行できるため、バイヤーからの信頼が強化。結果として契約単価が上昇し、新規取引先の獲得にもつながっています。

例えば、鹿児島のある茶農協では、ドローン導入から2年で収量予測精度が約90%に向上し、出荷調整の誤差がほぼ解消。静岡では、IoTセンサーと連動した被覆管理により、テアニン含有量が前年比15%アップし、品評会入賞率が向上するなど、ブランド力強化にも寄与しています。

導入ステップとコスト感

DX導入と聞くと「高額投資が必要では?」と不安に思う方も多いかもしれません。しかし、近年は小規模農家でも取り組みやすいレンタル・シェアリングサービスが整備されており、段階的な導入が可能です。

小規模農園のステップ

ステップ1:レンタルドローンの活用
地域農協や民間サービスが提供するドローンレンタルを利用し、まずは圃場の空撮からスタート。解析は外部委託することで初期コストを最小限に抑えられます。
ステップ2:単機能センサーの導入
土壌水分センサーや簡易温湿度ロガーを設置し、少しずつデータ収集を始めることで現場感覚とデータの違いを比較できます。
ステップ3:クラウド連携・AI解析に移行
効果を実感できた段階でクラウド型栽培管理システムと連動。収量予測や労務計画に活用するとROIが見えやすくなります。

大規模茶園のステップ

大規模経営では、自前のドローンやマルチスペクトルカメラを購入し、AI解析とクラウド管理システムを一体化させる方が長期的に有利です。自社で撮影・解析できる体制を構築することで、データ活用の幅が広がり、より精緻な栽培計画が可能になります。

コスト感と回収期間

一般的に、

  • ドローン一式:30〜100万円
  • マルチスペクトルカメラ:50〜150万円
  • IoTセンサー・クラウド利用料:年間数万円〜

といった費用が想定されます。
ただし、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトや各県の補助金を活用すれば、導入費用の1/2〜2/3が補助されるケースもあり、実質負担は大幅に軽減可能です。

ROI(投資回収率)は、

  • 収量予測精度の向上による廃棄ロス削減
  • 病害虫防除の効率化による農薬コスト削減
  • 労務コスト削減による人件費圧縮

といった要素を合算すると、平均2〜3年で投資回収できるとされています。中には、輸出向けOEM契約の単価アップで1年未満で回収できた事例もあります。

今後の展望|スマート茶園が当たり前になる未来

茶園DXは一時的なブームではなく、これからの標準モデルになっていくと考えられます。
AIやロボティクスの進化により、すでに自動走行摘採機や収穫ロボットの実証実験が進んでおり、将来的には夜間や早朝でも無人で収穫作業を行える体制が整います。これにより、農家の労働負担は大幅に軽減され、人手不足問題の抜本的解決が期待されます。

また、世界的に注目されるESG投資やカーボンクレジット取引の観点からも、スマート農業は環境負荷低減や持続可能性を重視する企業や投資家から高く評価されるようになります。
具体的には、

  • 施肥量・農薬量を最適化して環境負荷を削減
  • データによるエネルギー効率管理でCO₂排出量を可視化
  • カーボンニュートラル認証やサステナブル認証の取得

といった取り組みがブランド価値の向上と高付加価値市場への参入につながります。

さらに、将来的には完全トレーサブルなお茶が当たり前になる未来が見えています。消費者はスマホでQRコードを読み取るだけで、

  • どの茶園で育った茶葉か
  • どのような環境で栽培され、どのように加工されたか
  • COA(分析証明書)や残留農薬検査結果

までを確認できるようになるでしょう。これにより、消費者の安心感と購買意欲が高まり、プレミアムティー市場の拡大も加速します。

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まとめ|茶園DXは未来への投資

茶園DXは単なる作業効率化の手段ではありません。
それは、日本茶の未来を守り、ブランド価値を高めるための長期的な投資です。

  • ドローンによる生育状況の可視化で、摘採タイミングを逃さず高品質なお茶を安定供給
  • IoTセンサーによる環境データ管理で、テアニンや旨味成分を最大化
  • 収穫後〜出荷までのトレーサビリティ強化で、OEMや輸出先からの信頼を獲得

これらを組み合わせることで、収量最大化・品質安定・人手不足解消という三大課題を同時に解決できます。
そして、こうした取り組みは、持続可能な茶産業を次世代に残し、国内外の消費者に「選ばれるお茶」を提供するための強力な武器になります。

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