知的財産としての抹茶ブランド|商標・意匠登録の実務
世界的に人気が高まる抹茶市場。その一方で、模倣品・コピー商品の流通やOEM先による横流しといった知的財産リスクが増えています。ブランド名やロゴを守る「商標」、パッケージやデザインを守る「意匠」は、抹茶ビジネスを続けていく上で欠かせない武器です。
本記事では、抹茶ブランドを知的財産として守るために必要な基礎知識を解説します。商標登録・意匠登録の実務や国内外での対応、さらにOEM・PB開発に潜むリスクと契約の注意点まで、具体的な事例を交えながら整理しました。
「抹茶ブランドを資産として未来に残す」ために、今すぐ押さえるべき知財戦略を学んでいきましょう。
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なぜ抹茶ブランドに知的財産戦略が必要か
抹茶市場の拡大に伴い、国内外での模倣やコピー商品の流通が深刻な課題となっています。特にEC市場では「〇〇MATCHA」といった名称で販売される類似品が数多く見られ、消費者が正規品と誤解することで、本来守られるべきブランドの信頼性が損なわれるリスクがあります。
例えば、海外では日本の地名や農産物ブランドが無断で商標出願されるケースが後を絶ちません。実際に「西尾の抹茶」をローマ字表記した「NISHIO MATCHA」が中国で出願された事例もあり、地域の努力で築いたブランド価値が奪われかねない状況が生じています。
また、商標権を持たない場合には、OEM先が自社の商品を横流ししたり、自社名義で勝手に商標を取得したりするリスクも存在します。一度権利を他者に取られてしまうと、法的な争いに発展し、多大なコストや時間を要することになります。
さらに、意匠権を取得してパッケージやデザインを保護することも重要です。抹茶は「緑」という色や和の世界観を表現するデザインが多く、類似商品が市場に氾濫しやすい特徴があります。独自のデザインを意匠として登録しておけば、消費者にとって「このデザイン=このブランド」という認知を強め、模倣品との差別化を図ることができます。
つまり、知的財産戦略は単なる防御のためだけではなく、ブランドそのものを資産化し、市場での競争力を高めるための「攻めの戦略」でもあるのです。実際に、西尾の抹茶は地域団体商標を取得し、730年以上の歴史と品質を背景にブランド価値を高める取り組みを進めています。こうした取り組みは、宇治抹茶のようなトップブランドと対抗する上でも欠かせない手段となっています。
知的財産を押さえることは、抹茶ビジネスを続けるすべての事業者にとって、未来の市場を守るための必須条件といえるでしょう。
抹茶ビジネスにおける商標登録の基礎

抹茶市場が国内外で拡大する中で、ブランドを象徴する名称やデザインを守る「商標登録」は欠かせない取り組みです。商標は単なる法的な手続きではなく、消費者にとっての安心感を保証し、事業者にとっては事業資産を守るための第一歩となります。
商標で守れるもの
商標で保護できる対象は多岐にわたります。抹茶ビジネスにおいて重要なのは以下の3点です。
ブランド名
例:「〇〇抹茶ラテ」「Matcha Moments」など。商品名やシリーズ名を商標化することで、他社が同じ名称を使えなくなります。
ロゴや文字デザイン
抹茶色を基調にしたシンボルマークや、和風フォントをあしらったロゴなど。視覚的に消費者の記憶に残る要素を守ることができます。
キャッチコピーやスローガン
「一服で世界を癒す」「Tradition Meets Modern」など。短いフレーズであっても、継続的に使う場合は商標登録を検討すべきです。
これらを登録することで、模倣商品との差別化が可能となり、市場での競争力を強化できます。
商標登録の手続きフロー
商標登録は以下のプロセスで進みます。
- ①出願
- 特許庁へ申請(オンラインで可能)
- ②審査
- 類似商標や登録要件を満たしているかを確認
- ③登録
- 認められれば公告・登録証が発行
- ④更新
- 権利は10年ごとに更新可能
一般的に、出願から登録まで半年〜1年程度かかります。費用は区分数(商品やサービスのカテゴリー)によって変わり、代理人に依頼すると追加費用が発生しますが、拒絶リスクを減らせる安心感があります。
注意すべきポイント
抹茶ビジネスで商標登録を行う際には、以下の点に注意が必要です。
実際にお茶業界では、OEM先に商標を押さえられてしまい、自社ブランドが展開できなくなるトラブルも報告されています。「商標を取る=ビジネスを守る」という意識が不可欠です。
意匠登録で守るべきデザイン要素

商品が市場で選ばれる理由は、味や品質だけではありません。消費者は「見た目の印象」によって購買を決めることも多く、意匠権によるデザインの保護は抹茶ブランドの価値を左右する重要なポイントです。
抹茶ブランド特有の意匠要素
抹茶ビジネスでは、次のようなデザイン要素が意匠登録の対象となります。
- パッケージ形状
茶筒や缶、スティック型の個包装など。形状自体に独自性があれば意匠として保護できます。 - ラベルデザイン
和柄や金箔加工、産地を象徴するマーク(例:宇治、西尾など)。ブランドらしさを最も表現しやすい要素です。 - 商品の外観
抹茶スイーツや菓子のデザイン。独特な断面や色彩の組み合わせも意匠権で守ることができます。
これらは「差別化の要」となる部分であり、模倣が出やすい領域でもあるため、積極的に登録を検討すべきです。
意匠登録のメリット
意匠登録を行うことで、以下のメリットが得られます。
実際に「西尾の抹茶」は地域ブランドとしてマークを登録し、茶碗と茶筅を組み合わせたデザインを採用しました。これは単なる装飾ではなく、「本物の西尾の抹茶である」という信頼の証として機能しています。
国内外での登録と実務対応
抹茶ブランドを守るための知財戦略は、国内と海外の両方で行う必要があります。特に輸出を視野に入れる場合、国内だけの登録では不十分で、輸出先での権利化が欠かせません。
国内での商標・意匠登録
国内での登録には、まず事前調査が重要です。
J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)
無料で使える検索システムで、既に登録されている商標・意匠を確認できます。出願の重複や拒絶理由を避けるため、必ず利用しましょう。
弁理士に依頼する場合
費用はかかりますが、出願の確実性や戦略性が高まります。特に抹茶ブランドのように競合が多い分野では、専門家のサポートが有効です。
自己出願も可能
個人や小規模事業者でも申請はできますが、知識不足による拒絶リスクが高くなります。長期的なブランド運営を考えるなら、弁理士のサポートを併用するのが安心です。
海外での保護
抹茶ブランドが輸出される先は多岐にわたり、海外での権利化を怠ると致命的なリスクにつながります。
マドリッド協定議定書
一度の手続きで複数国に出願できる制度。輸出先が広い場合に効率的です。
各国での個別対応
EUはEUIPO、アメリカはUSPTO、中国は商標局での出願が必要です。中国では「NISHIO MATCHA」が無断で商標出願された事例もあり、早期対応が不可欠です。
登録のタイミングが勝負
商標は「先願主義」です。人気が出てから申請するのでは遅く、模倣業者に先を越される可能性があります。輸出前の段階で準備することが重要です。
OEM・PB開発と知財の関係
OEM(相手先ブランド製造)やPB(プライベートブランド)の開発においては、知財トラブルが起きやすくなります。特に抹茶のようにOEM供給が盛んな業界では、権利の所在を曖昧にしたまま契約を進めるのは非常に危険です。
起こりやすいリスク事例
契約段階で明確化すべき条項
- 商標権・意匠権の帰属
登録する権利が誰にあるのかを明確にする。 - 二次使用の範囲
OEM先が他の取引先に同じ商品やデザインを流用できないように制限。 - 販売終了後の権利処理
契約終了後に残った在庫やデザインの使用をどう扱うか取り決めておく。
これらを契約に盛り込むことで、後々のトラブルを防ぐことができます。逆に怠ると、自社が育てたブランドを他社に乗っ取られる最悪のシナリオも現実になりかねません。
ポイント:OEMやPBは事業拡大のチャンスである一方、知財管理を誤ると最大のリスクになります。商品開発と同時に「契約と知財」をセットで考えることが、持続的なブランド経営の鍵です。
あなたの抹茶ブランドを守る一歩を踏み出そう

抹茶ビジネスを次のステージへ進めたい方は、まず 商標・意匠の登録 を検討してみてください。
抹茶タイムズでは、抹茶産業の最新情報やブランド戦略に役立つ知見を発信しています。
あなたの抹茶ブランドの未来を、知的財産で守りましょう。
まとめ|抹茶ブランドを守る=未来の資産を守る
抹茶市場の拡大とともに、模倣・コピー品やOEMリスクは確実に増えています。商標・意匠を押さえることは、ブランドを守る「盾」であると同時に、ブランド価値を高める「矛」にもなります。
「西尾の抹茶」が地域団体商標を武器に宇治抹茶に次ぐブランド力を築いたように、知財戦略は未来の資産を守る道筋です。OEM・PBを展開する企業こそ、商品企画と並行して知財戦略を設計すべきでしょう。


