お茶の機能性表示をめぐる最新動向|カテキン・テアニンのエビデンスと規制
お茶は単なる嗜好品から、健康をサポートする機能性食品として再注目されています。特に、カテキンやテアニンといったお茶成分の科学的エビデンスが蓄積され、内臓脂肪低減・リラックス作用・睡眠の質改善といった効果が報告されています。2025年4月には機能性表示食品制度が改正され、パッケージ表示のルールがより明確に。国内外の規制や表示戦略を正しく理解することは、メーカーやブランドにとって大きな差別化ポイントになります。
本記事では、カテキン・テアニンの最新研究、国内外の制度比較、表示戦略やリスク管理までを徹底解説します。
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なぜ今、お茶の機能性表示が注目されるのか

ここ数年、日本では健康志向と節約志向の両立が大きなテーマとなっています。コロナ禍以降、在宅勤務やライフスタイルの多様化で体調管理に敏感になる人が増え、「毎日の習慣に取り入れやすい健康食品」が求められるようになりました。農林水産省「茶をめぐる情勢」によれば、緑茶飲料全体の市場は横ばい傾向にあるものの、機能性表示食品の茶飲料は毎年二桁成長を記録しています。これは単なる嗜好品としてのお茶ではなく、「健康課題の解決手段」として選ばれていることを示しています。
具体的な事例として、2024年にファミリーマートとサントリーが共同開発した「伊右衛門 毎日すこやか」シリーズは、茶カテキンを関与成分とし「BMIが高めの方の内臓脂肪を減らす」機能を表示。全国約1.6万店舗で展開され、コンビニPBとして初めて本格的に機能性表示を前面に打ち出しました。この取り組みは、コンビニ利用者の“ついで買い”や日常習慣に自然に溶け込む形で健康行動を促すモデルとして注目されています。
さらに、RTD(Ready to Drink)飲料やサプリメント市場では、科学的根拠に基づいた健康価値の提供が差別化要因となり、価格プレミアムを付けやすくなっています。機能性表示を活用することで、メーカーは通常の緑茶よりも10〜20%高い価格設定でも消費者の納得感を得やすいというデータもあります。結果として、機能性表示は単なる規制対応ではなく、ブランド戦略や収益性を高める重要な手段になっています。
カテキン・テアニンの主要エビデンス

カテキンの機能性
カテキンはお茶に豊富に含まれるポリフェノールで、近年の研究により多岐にわたる健康効果が科学的に裏付けられています。特に注目されているのが脂肪吸収抑制・内臓脂肪低減作用です。
国立健康・栄養研究所や企業によるヒト介入試験では、継続的な茶カテキン摂取によって8〜12週間で内臓脂肪面積が平均5〜10%減少することが報告されています。メタ解析でも複数の研究結果が統合され、BMIが高めの人において体脂肪減少効果が統計的に有意であると示されました。
また、カテキンは強力な抗酸化物質として知られ、活性酸素の除去やLDLコレステロールの酸化抑制に寄与することが確認されています。これにより動脈硬化や生活習慣病のリスク低減に貢献する可能性が指摘されています。加えて、免疫系への影響も研究が進んでおり、風邪やインフルエンザの発症リスク低減を示唆するエビデンスも存在します。これらのデータが、現在多くの機能性表示食品で「脂肪の吸収を抑える」「内臓脂肪を減らすのを助ける」と表示される根拠となっています。
テアニンの機能性
テアニンはお茶特有のアミノ酸で、心身へのリラックス効果が特徴的です。摂取後約30分で脳内のα波が増加することが脳波測定研究で明らかになっており、落ち着いた覚醒状態を促進します。筑波大学と伊藤園の共同研究では、就寝前にテアニン200mgを摂取した被験者群で睡眠の質(深睡眠時間・入眠潜時)が有意に改善しました。ストレスホルモンであるコルチゾール濃度の低下も観察され、ストレス緩和作用が裏付けられています。
さらに、近年は認知機能サポート効果への注目も高まっています。シニアを対象とした研究では、テアニン摂取により注意力や作業記憶が向上したとの報告があり、加齢による認知機能低下の予防や、働き盛り世代のパフォーマンス向上を目的とした商品開発に活かされています。
国内制度|機能性表示食品の実務
日本の機能性表示食品制度は、2015年4月に創設されました。この制度は、事業者が科学的根拠に基づき健康機能を表示できる仕組みで、消費者が商品を選びやすくするための透明性確保を目的としています。特定保健用食品(トクホ)と異なり、国による事前審査が不要で、事業者が責任を持って届出と表示を行います。これにより、開発コストと期間が抑えられ、より多くの商品が市場に投入されるようになりました。
届出には以下の要件を満たす必要があります:
科学的根拠の提出
- 最終製品または機能性関与成分に関するヒト臨床試験データ
- または複数の研究論文を統合評価したシステマティックレビュー(SR)
安全性データ
既存情報の整理、摂取上限、過剰摂取リスクの確認
成分規格と1日摂取目安量
分析試験で含有量を保証できること
加えて、パッケージや広告においては、「疾病の治療・予防」と誤認される表現は禁止されています。たとえば「血糖値を下げる」ではなく「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」と表現するなど、消費者に誤解を与えない言い回しが求められます。
2025年改正で強化されたポイント
2025年4月1日から施行された改正では、表示と情報提供のルールが大きく変わりました。
主な改正点は以下のとおりです。
これらの改正により、消費者は一目で商品が機能性表示食品であることを確認でき、企業にとってもコンプライアンスの強化が求められる時代となりました。経過措置は2026年8月31日までで、それ以降は新基準に沿ったパッケージでの製造が必須です。
海外規制と比較

日本国内で機能性表示食品制度が浸透する一方で、海外でもお茶の健康機能表示への関心は高まっています。しかし、国や地域ごとに制度設計や求められる科学的根拠の水準が異なるため、輸出やグローバル展開には細心の注意が必要です。
米国(FDA)のStructure/Function Claims
米国では、FDAが定めるStructure/Function Claims(構造・機能表示)の下、企業責任で表示が可能です。表示内容は届出ではなく通知制で、販売開始の30日前までにFDAへ通知すれば販売できます。
ただし、「疾病の治療・予防を示唆する表現」は一切認められず、“supports”や“helps maintain”といった穏やかな表現に限定されます。販売後はFDAやFTC(連邦取引委員会)による監視が行われ、根拠が不十分と判断されれば警告書(Warning Letter)が発行され、ブランド毀損のリスクがあります。
EU(EFSA)のヘルスクレーム制度
EUではEFSA(欧州食品安全機関)によるヘルスクレーム承認が必須で、科学的根拠の厳格さは世界でもトップクラスです。
申請にはSRや複数の臨床試験データが必要で、エビデンスの再現性や用量反応関係が明確でない場合は却下されます。特にポリフェノール類の表示は慎重に審査されており、承認件数は限られています。日本の茶カテキン関連表示をEUで行うには、追加試験やデータの欧州規格への適合が求められるケースも多く、上市までに数年を要することもあります。
中国・ASEANでの表示・許可制度
中国では「保健食品」登録が必要で、臨床試験や動物試験を含む安全性・有効性データを提出し、国家市場監督管理総局(SAMR)の審査を受けます。登録完了まで1〜2年の期間と数百万円単位のコストがかかることも珍しくありません。ASEAN諸国では国ごとに規制が異なり、マレーシアやシンガポールでは表示可能なヘルスクレームがリスト化されていますが、インドネシアやタイでは事前承認が求められる場合があります。
輸出用ラベルの実務とリスク
実務上よくあるトラブルとして、
が挙げられます。これらは通関トラブルや輸入差し止めの原因となるため、現地規制に精通したコンサルタントや輸出サポート企業との連携が不可欠です。ません。
表示戦略とマーケティングへの活用
機能性表示は、単なる法令遵守のための表記ではなく、ブランド価値を高めるマーケティング資産になり得ます。消費者は健康訴求に敏感な一方で、誇張表現や不確かな claims に不信感を抱きやすいため、言葉選びと見せ方が極めて重要です。
消費者に響く表現の工夫
「脂肪燃焼」「ダイエット効果」といった強い表現は、期待値を過剰に上げるリスクがあります。機能性表示食品では、「体脂肪を減らすのを助ける」「お腹の調子を整える」といった、科学的根拠に基づいたマイルドな表現が推奨されます。これにより、安心感と納得感を両立し、リピート購入につながります。
パッケージ・ECページでの訴求ポイント
- 主要面での視認性確保:改正制度では「機能性表示食品」の枠囲み表示が義務化。これを逆手にとり、ブランドカラーやアイコンと一体化させてアイキャッチに活用。
- 摂取目安量・機能性関与成分の明示:ECページでは、機能性表示のテキストだけでなく、グラフやピクトグラムでデータを可視化することで、理解度と購入率が向上します。
- FAQやQ&A設置:消費者が不安を感じやすい「安全性」「過剰摂取」についてあらかじめ回答することで、クレーム削減にも寄与します。
研究データとメディア露出の活用
プレスリリースやブランドサイトでは、エビデンスの出典(論文名・研究機関)を明記することで、消費者の信頼を得やすくなります。伊藤園の「健康ミネラルむぎ茶」やサントリー「伊右衛門 毎日すこやか」シリーズは、発表会やメディア取材を通じて研究データを積極的に公開し、ブランドを「健康訴求のリーダー」としてポジショニングしました。
成功事例:伊右衛門シリーズの波及効果
「伊右衛門 毎日すこやか濃い緑茶」は、発売初週から高い売上を記録し、SNSでは「コンビニで買える機能性表示茶」として話題化。日常的に継続できる価格設定と、信頼感のある表示が消費者に支持されました。この成功は、機能性表示が消費者の購買動機を強化し、ブランドへの愛着形成にも寄与することを示しています。
リスク管理とコンプライアンス
機能性表示はブランド価値を高める一方で、表示ミスや安全性問題が発覚すると大きなリスクとなります。消費者庁からの指摘や自主回収は、販売停止や在庫廃棄による直接的損失だけでなく、ブランドへの信頼低下という長期的ダメージにもつながります。
2024年に発生した紅麹サプリの健康被害問題では、健康被害の情報収集・行政報告の遅れが批判を呼び、制度全体の信頼性回復が急務となりました。これを受け、2025年4月改正では届出者に健康被害情報の速やかな提供義務が課され、違反時には営業停止命令も可能となっています。
リスク低減のための実務ポイント
・消費者対応体制の整備
コールセンターやチャットボットを活用し、健康被害の申し出があれば迅速にエスカレーション。行政報告フローを事前に整備する。
・OEM委託先との責任分担契約
表示責任・含有量保証・ロット管理・トレーサビリティを明確化し、契約書に盛り込む。製造GMPへの適合も必須。
・第三者分析とエビデンス検証
成分含有量・残留農薬・重金属などを外部機関で定期検査し、SRや臨床試験データが最新の基準に合致しているか確認する。
・表示・広告の事前チェック体制
社内外の専門家(薬事チェック担当や弁護士)による二重確認を行い、「疾病の治療・予防」と誤解される表現を排除する。
抹茶タイムズからのおすすめ

お茶業界の最新動向や機能性表示食品の制度改正ポイント、成功事例をもっと深掘りしたい方は、ぜひ抹茶タイムズの記事をご覧ください。
- 最新の制度改正解説:表示ルールや届出の実務ポイント
- 海外規制比較ガイド:輸出時に注意すべき表示・翻訳ルール
- 成功事例インタビュー:伊右衛門や大手メーカーの実践事例
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まとめ|お茶の機能性表示はブランド戦略の要
お茶の機能性表示は、科学的エビデンスに裏付けられた差別化戦略の中核です。カテキンやテアニンに関する研究は進み、脂肪低減・ストレス緩和・認知機能サポートといった具体的な健康効果が明らかになっています。さらに2025年の制度改正により、表示の透明性が高まり、消費者が安心して選べる環境が整いました。
今後は、国内外の規制の違いを理解しながら、誤解のない表現・適正なパッケージ設計・エビデンスの定期更新を行うことが、ブランドの信頼構築と長期的な市場参入の鍵となります。
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