香港の抹茶事情|健康・文化・体験が融合する“アジア最前線市場”

かつて「紅茶の街」として知られた香港で、いま抹茶ブームが静かに、しかし確実に広がっています。
カフェ街では抹茶ラテや抹茶スイーツが定番化し、若者を中心に“日本の味”が日常の一部に溶け込みつつあります。
健康志向やSNSトレンドの高まりに加え、日本文化への親近感も後押しし、「抹茶=おしゃれでヘルシーなライフスタイル」という新しい価値観が根付いているのです。

本記事では、香港で進化する抹茶カフェ文化、人気店の事例、SNSが生むスイーツ経済、
さらに日本ブランドにとってのビジネスチャンスと課題までを包括的に解説します。
アジアの中でも独自の発展を見せる「香港の抹茶市場」の今を、データと現地動向から読み解きます。

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香港で高まる抹茶人気の背景

ここ数年、香港では抹茶ドリンクや抹茶スイーツを扱うカフェが次々と登場しています。
街を歩けば、抹茶ラテ・抹茶ティラミス・抹茶パフェといった「緑色のスイーツ」を目にしない日はないほど。
その背景には、健康志向の高まり・日本文化への親近感・SNSによる情報拡散という3つの要素が大きく関わっています。

健康志向とストレスケア需要の拡大

経済と情報の中心都市・香港では、長時間労働や高い生活コストによるストレスが深刻化しています。
そんな中で注目されているのが、抹茶に含まれるカテキン・テアニン・ビタミン群の効果です。

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これらの成分が「カフェインに頼らず整うドリンク」として支持を集め、
“仕事の合間のリフレッシュドリンク=抹茶ラテ”という文化が定着しつつあります。
特にオフィス街やショッピングモールでは、抹茶を取り入れたヘルシーメニューが増加。
コーヒー文化が根強い香港でも、「体に優しい日本茶ドリンク」として確実に地位を築いています。

日式ブランドブームと文化的親近感

香港では、長年にわたり「日本=品質」「和=上質」というブランドイメージが根付いています。
その象徴が、2024年に香港・AIRSIDEモールに進出した「nana’s green tea」です。
京都・宇治の「山政小山園」の抹茶を使用し、ドリンクだけで約90種類を提供
現地でも瞬く間に人気を集め
“現代の茶室”を体験できる日式カフェとして話題となりました。

さらに、K11ショッピングセンターの「京都抹茶庵 丸久小山園」も好評。
本格的な抹茶とスイーツを楽しめる空間として、観光客だけでなく地元の若者からも支持されています。
香港人にとって抹茶は、“日本旅行の延長線上で味わう幸福時間”であり、
「味」だけでなく「体験」としての価値が評価されているのです。

SNSと観光を軸にした拡散力

香港の抹茶人気を支えているもう一つの要素が、SNSによる情報拡散です。
Instagramや小紅書(RED)では「#matchahk」「#抹茶控」などのタグで数万件の投稿があり、
特に抹茶ワッフル・パフェ・ラテアートなど“映える抹茶”が人気を集めています。

また、観光都市として世界中の旅行者が訪れる香港では、
「日本式カフェで抹茶を飲むこと」自体が観光体験の一部になっています。
ホテルや百貨店も抹茶アフタヌーンティーを導入するなど、
抹茶は“ドリンク”を超えて都市文化のシンボルとして定着しつつあるのです。

香港で進化する抹茶カフェ文化

香港の抹茶カフェ文化は、単なる日本の模倣ではありません。
“日本の抹茶文化を香港らしく再解釈する”という形で、独自の進化を遂げています。
その背景には、若者層の健康志向やデザイン感度の高さ、そして「体験消費」への価値観の変化があります。

若者に支持される“日式抹茶カフェ”

2024年、九龍・啓徳地区に誕生した大型複合施設「AIRSIDE」。
その中にオープンした「nana’s green tea 香港店」は、まさに香港抹茶ブームの象徴です。
京都・宇治の老舗「山政小山園」の抹茶を使用し、
「抹茶ラテ」や「抹茶白玉ラテ」「抹茶チョコレートラテ」など、ドリンクだけで90種類近い多彩なメニューを展開しています。

さらに、金箔をあしらった「抹茶生チョコレートパフェ」など、
“贅沢で映える”和スイーツが香港のZ世代を中心に人気を集めています。

インテリアも「現代の茶室」をテーマに、木の温もりとミニマルデザインを融合。
広々とした店内には四季を表現した装飾が施され、
「チェーン店なのに一つひとつが特別に感じられる空間」として評判です。

このような日式抹茶カフェは、“味わう場所”から“体験する場所”へと進化しており、
抹茶を通じて「日本文化×香港ライフスタイル」が交差する新たなトレンドを生み出しています。

ローカルブランドと新世代オーナーの台頭

一方で、香港人オーナーによるローカル発の抹茶カフェも続々と登場しています。
代表的なのが、「Matchali」と「Yú Teahouse」
どちらも「日本品質の抹茶を、香港らしい感性で表現する」ことをコンセプトに掲げています。

  • Matchali:アートギャラリーのような店舗空間で、ビーガン対応の抹茶ラテや抹茶スムージーを展開。
    ローカルの健康志向層や外国人駐在員に支持されています。
  • Yú Teahouse:地元農家の蜂蜜や豆乳を使用し、“香港の素材でつくる日本の抹茶”をテーマに。
    抹茶体験ワークショップやアートイベントも開催し、コミュニティ型カフェとして注目を集めています。

これらの店舗は、単なる「輸入文化」ではなく、
香港の感性を取り入れた“再創造された抹茶文化”を体現しています
環境意識やローカル志向が強い若者層にとって、抹茶はサステナブルでクリーンなライフスタイルの象徴
になりつつあります。

SNSが生む「抹茶スイーツ経済」

香港での抹茶人気を牽引しているのが、SNSを中心に生まれた“ビジュアル経済”です。
特にInstagramや小紅書(RED)では、「#matchahk」「#抹茶控」などのハッシュタグ投稿が爆発的に増加し、“見た目で楽しむ抹茶”が若者文化の一部として定着しています。
抹茶はもはやドリンクではなく、“撮って共有する体験型スイーツ”へと進化を遂げているのです。

Instagram・小紅書で拡散する抹茶スイーツ

香港のSNS上では、抹茶スイーツの写真が次々と拡散されています。
特に人気なのは、以下のような「映える」抹茶メニューです。

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その中心にあるのが、日本直営ブランドの存在です。
K11ショッピングセンター内の「京都抹茶庵 丸久小山園」では、季節限定の「クリスマス抹茶ワッフルサンデー」がSNSで大反響。
「見た目が可愛いだけでなく、日本と同じ味!」という口コミが拡散され、
香港中の抹茶ファンが訪れる“聖地”として定着しました。

さらに、「nana’s green tea」香港店でも、金箔をあしらった限定生チョコレートパフェが人気を集め、
開店初週から連日完売。SNSが引き金となり、来店行動と購買を直接結びつける経済効果を生み出しています。

Z世代が作る“飲むより撮る”文化

香港のZ世代は、味覚体験よりも「どんな写真を撮れるか」を重視する傾向があります。
抹茶ラテの層やソフトクリームの形、金箔や白玉のトッピングなど、
「撮るために作られた抹茶スイーツ」が新しいマーケットを形成しているのです。

この動きは、単なるSNSトレンドに留まりません。
投稿が増えるほどブランド認知が高まり、さらに来店が増えるという循環型マーケティングが確立されています。
特に小紅書では「香港 抹茶カフェおすすめ」などの検索が急増し、
SNS経由で店舗を訪れる観光客も増加しています。

つまり、香港ではZ世代を中心に

“飲むための抹茶”から“撮るための抹茶”へ。

という価値転換が起こっており、これが「抹茶スイーツ経済」と呼ばれる新しい消費構造を形づくっています。
一枚の写真、一つの投稿が、数千人の購買意欲を動かす——。
その中心にあるのが、抹茶の
美しさ・文化性・体験性なのです。

日本ブランドにとってのビジネスチャンス

香港市場は、日本の抹茶ブランドにとって最も魅力的な海外市場のひとつです。
成熟した消費者層、高い購買力、そして“本物志向”が揃う香港では、品質と文化価値を兼ね備えた日本産抹茶が確実に支持を広げています。
単なるトレンドではなく、「本物の日本茶体験」を求める層の存在が、日本ブランドに新たなビジネスチャンスをもたらしています。

高品質・原産地ブランドへの信頼

香港の消費者は、製品の「出所」や「信頼性」に非常に敏感です。
「宇治」「西尾」「鹿児島」
などの原産地ブランドは、“品質保証の証”として高く評価されています。

中でも、丸久小山園や山政小山園といった老舗ブランドの抹茶は、香港の高級百貨店やホテルでプレミアム扱いされ、
1杯あたり60〜80香港ドル(約1,200円前後)でも注文されるほどの信頼を得ています。

この背景には、以下の要素が挙げられます。

  • 安定した品質管理とトレーサビリティ(産地証明・製法の透明性)
  • “文化”としての価値訴求(茶道・おもてなし・静寂の美など)
  • ブランドのストーリーテリング(伝統と革新の共存)

香港の消費者は、価格よりも“体験価値”を重視する傾向があり、
「安い抹茶」よりも“本物を飲んでいる実感”に価値を見出しています。
この購買心理は、日本ブランドがプレミアムポジションを維持するうえで非常に有利な土壌といえます。

文化体験型カフェとコラボ展開の可能性

今後、香港市場で注目されるのは「体験型抹茶カフェ」の拡大です。
抹茶を“飲む”から“体験する”へと進化させる動きが加速しています。

たとえば、茶筅を使った抹茶点て体験や、和菓子づくりワークショップを組み合わせるカフェが登場し、
現地メディアや旅行系SNSでも人気コンテンツとなっています。
「体験×文化×カフェ」を組み合わせた空間は、観光客だけでなく地元の富裕層にも支持されています。

さらに、日本ブランドが旅行会社やホテルと連携するコラボ展開も拡大中です。

  • ホテルのアフタヌーンティーに“宇治抹茶デザートコース”を導入
  • 日本観光と連動した“抹茶体験フェア”を香港で開催
  • 和カフェと化粧品・雑貨ブランドによるクロスカルチャー企画

このように、抹茶は文化輸出の中心ツールとしても進化しています。
「味わう」「撮る」「学ぶ」を融合させた体験設計が、今後の香港における日本ブランド成功のカギとなるでしょう。

課題と今後の展望|模倣品・価格競争を超えて

香港の抹茶市場は拡大を続ける一方で、“本物の日本抹茶”の価値が問われる段階に入っています。
市場の成熟とともに、模倣品や価格競争といった構造的な課題が浮き彫りとなり、
日本ブランドが“文化と品質の信頼”をいかに維持できるかが次の焦点となっています。

中国・台湾産抹茶との競合問題

近年、香港では中国や台湾から輸入された抹茶が「日本風抹茶」や「宇治抹茶」として販売されるケースが増えています。
これらの製品は価格が安く、大量流通できるため、一見すると日本産と区別がつかない場合も少なくありません。

しかし、実際には風味・香り・色合いの点で大きな差があり、
“宇治抹茶”の誤称問題として現地メディアでも取り上げられています。
このような状況が続けば、「抹茶=安価で大量生産できるもの」という誤解が広がり、
日本産抹茶のブランド価値が損なわれる恐れがあります。

そのため、日本ブランドに求められるのは、
「原産地証明」「品質認証」「ストーリーテリング」の3点によるブランド防衛策です。

  • 原産地ラベルやトレーサビリティの明示
  • JAS認証や有機認証マークの活用
  • 茶園・職人の背景を伝えるブランドストーリー

こうした取り組みが、香港の消費者にとっての「信頼の証」となり、
価格ではなく“真の価値”で選ばれるブランドへとつながります。

プレミアム市場で生き残る差別化戦略

香港市場で長期的に成功するためには、
“品質×体験×ストーリー”の三位一体戦略が不可欠です。
価格で競うのではなく、「体験価値」と「文化的背景」で差別化を図ることが求められます。

たとえば、抹茶を通じて日本の伝統を感じられる体験設計が効果的です。
カフェでの茶筅体験、アフタヌーンティーとのコラボ、ホテルでの抹茶セレモニーなど、
“文化に触れる抹茶消費”は香港の富裕層や観光客に強く響いています。

さらに、環境・社会への配慮を重視するZ世代・ミレニアル層には、
サステナブルな茶葉生産やフェアトレード訴求も有効です。
「おいしいだけでなく、地球にもやさしい抹茶」を掲げるブランドが、今後の支持を集めるでしょう。

結論として、香港市場で日本ブランドが生き残る鍵は、
価格競争を超えた“文化価値と信頼性の再定義”にあります。
抹茶を「飲み物」ではなく「文化体験」として届けること——それこそが、
この市場で長く愛されるための最も強力な差別化戦略です。

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海外で広がる抹茶ブームの裏側には、
健康志向・文化発信・サステナブル消費といった多様な価値観が交錯しています。
「抹茶タイムズ」では、世界各国の市場動向やブランド戦略、
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  • 抹茶ブランドの海外展開・ビジネス戦略事例
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まとめ|香港は東アジア抹茶カルチャーの交差点

香港は、健康志向・日本文化・SNSトレンドという3つの潮流が交わる、アジア屈指の抹茶先進都市です。
抹茶が「癒やし」と「体験」を両立する飲み物として愛される背景には、
ストレス社会の中で“心を整える時間”を求める香港人の価値観が反映されています。

そして今、香港の抹茶文化は観光・食・ライフスタイルを巻き込んだカルチャームーブメントへと進化しています。
抹茶カフェでのひとときが観光の目的になり、SNS投稿が消費を生み、
“日本の美意識”が現地のデザインや習慣に溶け込み始めています。
それは単なる輸入トレンドではなく、文化の交差点としての香港が生み出す新しい抹茶物語です。

日本ブランドにとっても、香港は単なる販売市場ではなく、
「品質×文化×共感」で世界に発信するショーケース都市といえます。
品質への信頼、産地のストーリー、そしておもてなしの精神——。
これらを体験として伝えることができれば、抹茶は国境を超えた文化の架け橋になるでしょう。

今後も香港は、アジアの抹茶カルチャーをつなぐハブとして、
日本茶文化の未来を照らす重要な拠点であり続けるはずです。

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