なぜ高品質な抹茶は伝わりにくいのか?品質・産地・ブランドの差を正しく伝える方法

農林水産大臣賞を受賞した碾茶を作る生産者でさえ、「良いものを作っているだけでは伝わらない」と危機感を口にします。抹茶の品質は確実に向上しています。しかし、その差が消費者やバイヤーに届いていない——これが今の抹茶市場が抱える、最も見えにくい問題です。

「なぜ高品質な抹茶なのに、値段がつかないのか」「なぜ安い抹茶ばかりが売れるのか」——その答えは、品質そのものではなく、伝える仕組みの有無にあります。そのため本記事では、なぜ高品質な抹茶ほど伝わりにくいのか、その構造的な原因と、品質を正しく届けるための具体的な方法を徹底解説します。生産者・バイヤー・消費者のすべてに読んでいただきたい内容です。

\抹茶粉末をお探しの企業様へ/


弊社では、京都・宇治をはじめ、鹿児島・福岡・静岡など日本各地の産地から、
有機JAS認証付きのセレモニアルグレードから加工用まで、幅広いグレードの抹茶を取り揃えております。

「案件はあるのに、安定して抹茶を仕入れられない…」
「カフェの新メニューで抹茶を使いたい!」

「良い抹茶」が売れない——市場に潜む構造的なミスマッチ

抹茶の世界需要は拡大を続けています。2024年の日本の抹茶輸出額は364億円と過去最高を記録し、市場は明らかに活況です。ところが、産地の生産者に話を聞くと、明るい話ばかりではありません。とりわけ、需要の拡大と、現場の手応えの間には、深いミスマッチが存在しています。

抹茶市場は活況なのに、作り手の苦悩は深まっている

愛知県西尾市でヤマフジ製茶を営む稲垣宏紀さんは、第73回全国茶品評会で最高賞にあたる農林水産大臣賞を受賞した、日本一の碾茶の作り手です。しかし稲垣さんは、こう語ります。「地元の子どもたちは石臼体験などを通して『西尾は抹茶が有名だ』と知っているけど、結局地元の中でやっているだけ。もっと外に向けてPRしないと」——つまり、日本一の品質を持ちながら、それが世界に届いていないという危機感は、多くの生産者に共通するものです。

この言葉は、抹茶市場の本質的な問題を突いています。品質と認知は、まったく別の話なのです。つまり、どれだけ良いものを作っても、「知られなければ存在しないのと同じ」という現実が、生産者を苦しめています。

市場の恩恵は「有名産地・大手ブランド」に集中している

抹茶ブームの恩恵を最も受けているのは、「宇治抹茶」という強力なブランドネームを持つ京都・宇治産や、大手茶業メーカーの商品です。その理由は、消費者はパッケージの「宇治抹茶」という文字を信頼して購入するからです。一方で、西尾・八女・静岡・鹿児島など、同等以上の品質を持つ産地の抹茶は、知名度の差だけで価格競争に巻き込まれてしまいます。

つまり、「高品質であること」と「高品質だと知られること」は別物です。そのため、この差を埋める仕組みを持っているかどうかが、ブームの恩恵を受けられるかどうかの分岐点になっています。

「高品質な抹茶」と「売れる抹茶」の間にある深い溝

高品質な抹茶の品質評価は、極めて官能的・専門的です。高級抹茶には「香高(かだか)」と表現される上品な香りがあり、低級品には青臭さや焦げ臭さがあります。しかしこうした差異は、文字や画像では伝えにくく、実際に飲み比べることでしか体感できません

「見えない品質」を言葉で伝えなければならない——これが、高品質な抹茶ほど伝達コストが高くなる根本的な理由です。したがって、この問題を解決しない限り、良い抹茶が正当に評価される市場は生まれません。

なぜ品質の差が伝わらないのか——4つの構造的な原因

「伝わらない」のは、生産者の努力が足りないからではありません。それどころか、市場の構造そのものに、品質が見えにくくなる仕組みが組み込まれています。まずその原因を正確に把握することが、解決への第一歩です。

原因① グレードの統一規格が存在しない

まず、抹茶には「上級」「中級」「製菓用」などのグレード(等級)区分がありますが、業界全体に共通する統一規格は存在しません。つまり、各メーカーが独自の基準でグレードを設定しているため、A社の「上級」とB社の「上級」の品質が全く異なるケースが日常的に起きています。

つまり、消費者やバイヤーがパッケージの「上級」という文字を信頼して購入しても、それが何を根拠にした「上級」なのか、確認する手段がありません。これは抹茶市場全体の問題であり、高品質品と低品質品が同じラベルで並ぶ構造的な欠陥といえます。

グレードの根拠を明示できないサプライヤーは、消費者・バイヤーから見ると「信頼しにくい」存在になります。逆に言えば、根拠を明示できるサプライヤーが選ばれる時代が来ています。

原因② 表示ルールの抜け穴——「宇治抹茶使用」の実態

また、日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」によると、産地銘柄を表示する場合、その産地の原料使用割合が50%以上であれば産地名を名乗ることができます。つまり、「宇治抹茶使用」と書かれた商品でも、最大49%は他産地の茶葉がブレンドされている可能性があります。

これは違法ではなく、現行のルール内での表示です。しかし消費者の多くは「宇治抹茶使用=宇治産100%」と思っています。ラベルの言葉と実態の間にある乖離が、市場への不信感を生み、本物の高品質品の価値を薄める構造になっています。

原因③ 「抹茶」と「粉末緑茶」の混同

さらに、「抹茶」と「粉末緑茶」は、原料も製法も全く異なる別物です。抹茶は覆下栽培で育てた碾茶を石臼で挽いて作るものですが、被覆せずに栽培した茶葉を粉末にしたものを「抹茶」と謳っている商品が市場に多数存在しています。

こうした商品が安価で流通することで、消費者の「抹茶の味」に対する基準が低いところで固定されてしまいます。つまり、本物の高品質抹茶に出会っても「いつもと味が違う」「高すぎる」と感じてしまう——低品質品が基準を上書きしてしまう悪循環が、市場全体に広がっています。

原因④ 品質は「工程の積み重ね」だが、パッケージには書かれない

最後に、抹茶の品質は、一つの要素で決まるものではありません。以下の5つの工程すべてが積み重なって、はじめて品質が決まります。

工程高品質の条件
栽培遮光20日以上の覆下栽培でテアニンを蓄積
茶葉の選別一番茶の新芽のみを使用
蒸し・乾燥均一な蒸しと適切な温度管理で色・香りを保持
粉砕石臼挽きで摩擦熱を抑え、粒子を5〜10ミクロンに
品質評価茶師による色・香り・旨み・渋み・粒度の総合判定

しかしこれらの情報は、通常のパッケージには一切記載されていません。「石臼挽き」という一言があれば差別化できる情報が、書かれていないまま棚に並んでいます。これが「見えない品質」の最大の原因です。

「伝わらない」ことで起きる損失——生産者・バイヤー・消費者の全員が損をする

品質が正しく伝わらないことは、市場に関わるすべてのプレーヤーに損失をもたらします。そのため、問題を他人事と思わずに、自分の立場からの損失を具体的に把握することが、行動変容の第一歩です。

損失① 生産者——良いものを作っても適正価格で売れない

まず、品質で勝っていても、「伝える力」がなければ価格競争に巻き込まれます。高品質を維持するためには、遮光資材・一番茶の確保・石臼製法のコストが必要ですが、それが価格に反映されない構造では、品質への投資が回収できません。

実際、広告宣伝費をかけた企業が必ずしも良い原料を使っているとは限りませんむしろコストを原料に集中させ、宣伝費を抑えることで同じ価格帯でより良い品質の抹茶を作る生産者が、知名度のある競合に負けるという逆転現象が起きています。品質への投資が報われる市場を作るためには、品質の可視化が不可欠です。

損失② バイヤー——安さで仕入れて顧客離れを起こす

次に、toBバイヤーが品質の差を見抜けずに安価な抹茶を仕入れた場合、起きるリスクは価格以上のコストになります。顧客から「前回と味が違う」「色が黄みがかっている」というクレームが入り、ブランドへの信頼が毀損されます。

仕入れコストを10%削減したとして、その結果として顧客1人を失えば、長期的なLTV(顧客生涯価値)の損失は仕入れ削減額の数倍〜数十倍になる可能性があります。「安く仕入れた」はずが、最終的にブランドを壊す意思決定になる——これが、品質の差を見抜かない調達が引き起こす最大のリスクです。

損失③ 消費者——「抹茶ってこんなもの」という誤った基準が定着する

最後に、低品質な抹茶を「本物」として使い続けた消費者は、本物の高品質抹茶に出会っても「これは高すぎる」と感じてしまいます。つまり、比較対象が低品質品である以上、どれだけ良いものを提示しても「割高」に見えてしまうのです。

この状態が広がると、市場全体の品質基準が下がっていきます。高品質品を作ること自体が経済的に成立しなくなり、最終的に産地・農家・職人の技術継承が途絶えるリスクにつながります。そのため、消費者が正しく知ることは、文化を守ることでもあります。

品質の差を正しく伝えている企業がやっていること——成功事例に学ぶ

「伝わらない」は宿命ではありません。品質の差を正しく伝え、価格プレミアムを確立している企業・ブランドは、すでに世界市場に存在しています。その共通点は明確です。

成功事例① 「誰が作ったか」を語る——シングルオリジン戦略

まず、京都・宇治の茶農家と直契約するMatchafulや、産地名を前面に出すCha Cha Matchaは、「シングルオリジン」戦略で米国市場に品質の差を可視化することに成功しています。つまり、「茶師の顔」「農家の名前」「畑の場所」を語ることで、単なる粉末ではなく「物語のある食品」として高価格帯での定着を実現しています。

これは、コーヒー市場でスペシャルティコーヒーが成立したのと同じ構図です。つまり、誰が、どこで、どうやって作ったか」を語れることが、品質の最も直感的な証明になります。そのため、この戦略は抹茶市場でも有効であり、産地・農家との直接ネットワークを持つサプライヤーだけが実現できます。

成功事例② 「工程を見せる」——製造プロセスの透明化

次に、品質を伝えるもう一つの有効な方法が、製造工程の数字を公開することです。「石臼挽き」「一番茶使用」「被覆日数28日」「粒度8ミクロン」——これらの数字は、専門家でなくても「こだわっている」ことが伝わる言葉です。

さらにtoBバイヤー向けには、COA(分析証明書)による農薬残留・重金属・微生物の検査値の提示が、品質の客観的な証明になります。「名前」よりも「中身の数字」で評価できる情報を提供することが、信頼構築の最短ルートです。グレード表示だけに頼らず、根拠を数値で示せるサプライヤーが選ばれる時代になっています。

成功事例③ 「体験させる」——サンプルと比較試飲の力

プロの茶師が抹茶の等級を評価する際には、色・香り・旨み・渋み・粒子の細かさという5つの感覚的指標を総合的に判断します。これらの差は、説明を読んでも伝わりません。飲み比べて、はじめて体感できます

toBバイヤーへのアプローチとして最も効果的なのは、「複数グレードのサンプルを送り、実際に比較してもらう」ことです。セレモニアルグレード・ラテグレード・製菓グレードの3種を並べて試飲すれば、価格差の理由が体感として理解されます。サンプル提供の仕組みを持つサプライヤーは、それだけで品質への自信を証明しています。

品質を正しく伝えるための5つのチェックポイント

消費者・バイヤーを問わず、品質を正しく伝えるために必要な情報は以下の5点です。

Success

① 産地・茶期の明記(一番茶/二番茶、京都府産/鹿児島産など)

Success

② 被覆日数・製法の開示(石臼挽き/機械挽き、遮光日数)

Success

COA・分析証明書の提示(農薬残留・重金属・微生物検査値)

Success

視覚的な品質の見せ方(鮮やかな緑色の写真・溶けやすさの動画)

Success

比較体験の提供(無料サンプル・グレード別飲み比べセット)

この5点を満たせるサプライヤーとパートナーを組むことが、バイヤー側にとっての「品質の可視化」への最も現実的なアプローチです。

toBバイヤーが「品質の見えるサプライヤー」を選ぶべき理由

品質が伝わりにくい市場構造の中で、それでも正しい選択をするためには、何を基準にすればよいのか。toBバイヤーに向けて、具体的な判断軸をまとめます。

「価格だけで選んだ仕入れ先」が引き起こすブランドリスク

グレードが不透明なサプライヤーから仕入れた場合、最も深刻なリスクはロットごとの品質ブレです。「色が薄い」「香りが弱い」「前回と味が違う」——これらのクレームがカフェや食品メーカーに届いたとき、矢面に立つのは仕入れ先ではなく、自社ブランドです。

安価な仕入れによるコスト削減効果は、一度のクレームで吹き飛びます。さらに深刻なのは、品質ブレが繰り返されることで顧客が離れ、ブランドの信頼が長期にわたって毀損されることです。調達コストの最適化は、品質の透明性を担保した上で行うべきであり、不透明な安値仕入れはリスクの先送りに過ぎません。

「品質が見える」サプライヤーの4つの条件

toBバイヤーが仕入れ先を評価する際の、実務的なチェックリストです。

  • ① 産地・品種・茶期の産地証明書が提出できる(どこの、いつ摘んだ茶葉かが証明できるか)
  • ② グレードの根拠を開示できる(被覆日数・茶期・粉砕方法の具体的なデータがあるか)
  • ③ COAを輸出先国基準で提出できる(農薬残留・重金属・微生物の検査が輸出先の規制に対応しているか)
  • ④ 用途別のグレード提案ができる(飲用・ラテ・OEM・製菓で最適品を提示できるか)

この4点を満たせないサプライヤーは、品質への責任を負えないと考えるべきです。逆に、これらをすべて提示できるサプライヤーは、品質への自信と透明性を持った調達パートナーといえます。

産地ネットワークの広さが「品質を伝える力」を生む

単一産地・単一グレードしか扱えないサプライヤーでは、バイヤーの用途変化や予算変更に対応した最適提案ができません。そのため、宇治・静岡・鹿児島・八女など複数産地をカバーし、セレモニアルから製菓用まで幅広いグレードを取り扱えるサプライヤーだけが、「用途に合わせた品質の最適提案」を実現できます。

産地ネットワークが広いということは、比較できる選択肢が多いということです。それはそのまま、**バイヤーに対して品質の差を「体験させる力」**につながります。つまり、80以上の農家・加工業者との直接ネットワークを持つサプライヤーが提供できる価値は、単なる価格競争を超えたところにあります。

関連記事

市場の動向や最新トレンド、国内外の注目事例、
茶園インタビューや開発現場の裏側など、抹茶の”今”がわかる専門メディア【抹茶タイムズ】を運営中です。

抹茶ビジネスに関わる方
新メニュー・新商品開発を検討中の方
抹茶業界の動きをキャッチしたい方

ぜひ【抹茶タイムズ】をチェックしてみてください!

まとめ|品質は「作る」だけでは伝わらない——伝える仕組みを持つことが競争優位になる

本記事の要点を整理します。

【高品質な抹茶が伝わりにくい3つの構造的原因】

  • グレードの統一規格がない:同じ「上級」でもメーカーによって品質が異なる
  • 表示ルールの抜け穴:「宇治抹茶使用」でも50%ルールがある
  • 品質は工程の積み重ね:パッケージには書かれない5つの工程が品質を決める

【品質を正しく伝えるための3つのアプローチ】

  • 「誰が作ったか」を語る:シングルオリジン戦略で品質を物語に変換する
  • 「工程の数字」を見せる:被覆日数・茶期・粉砕方法・COAで根拠を示す
  • 「体験させる」:複数グレードのサンプル比較で差を実感させる

品質は「作る」だけでは市場に届きません。しかし、伝える仕組みを持つことで、良い品質は必ず正当に評価されます。生産者・バイヤー・消費者のすべてが、品質の差を正しく知り、正しく選ぶことで、日本産抹茶の市場全体の品質基準が上がっていきます。つまり、本物を選ぶことは、産地と生産者を守ることでもあるのです。

参考資料

#資料名発行者・URL
1抹茶のグレードはどう決まる?製造工程と品質の基準を徹底解説Bio Terrace https://bio-terrace.jp/matcha-grade-process/
2抹茶のグレードと生産エリアの選び方|用途別実務ガイドLink Global https://www.linkglobal.jp/post/抹茶のグレードと生産エリアを正しく理解する-用途別に最適解を選ぶ実務ガイド
3緑茶の表示基準(2019年3月)公益社団法人 日本茶業中央会 https://www.nihon-cha.or.jp/pdf/hyoujikijyun.pdf
4初心者の抹茶の選び方|なぜ価格が異なるのか?MATCHA DAYS https://matchadays.com/2024/02/choosing_matcha_powder/
5抹茶がアメリカでバズってる5つの理由btrax freshtrax https://blog.btrax.com/jp/matcha-in-us/
6「日本一の抹茶」の源流を訪ねて。ヤマフジ製茶・稲垣宏紀さんNIHONMONO https://nihonmono.jp/article/38915/
7美味しい抹茶とは・抹茶7つの違い山政小山園 https://www.yamamasa-koyamaen.co.jp/matcha/point/tasty.html
8抹茶の等級判定術|プロが見極める色・香り・味わいの秘密知覧一番山農園 https://blog.chirancha.net/804/
LINE
記事の広告掲載はこちら