抹茶の粒度・分散性・沈殿とは?飲料開発で重要な原料特性

抹茶の粒度・分散性・沈殿とは?飲料開発で重要な原料特性

抹茶飲料の原料選定において、粒度(粒子径)・分散性・沈殿抑制性は製品品質と製造工程の安定性に直結する物性です。粒子径が大きいと飲料中での沈降速度が速まり、口当たりのざらつきや色ムラが生じやすくなります。一方、過度な微粉砕は製造コストの増大や静電気凝集リスクを招くため、用途に応じた粒度の最適化が求められます。

本記事では、粒度指標であるD50・D90の読み方、石臼挽きと工業粉砕の違い、飲料タイプ別の仕様目安、沈殿対策の処方アプローチ、COA(成分規格書)の確認ポイント、農薬ポジティブリスト・有機JASまでを調達・商品開発の実務視点で解説します。サプライヤーとの仕様交渉や品質条件の整理にお役立てください。

この記事のポイント

  • 抹茶の粒度はD50・D90で管理し、飲料用途では一般にD90が小さいほど沈殿しにくい傾向がある
  • 石臼挽きと工業粉砕では粒度分布の形状と熱履歴が異なり、風味・色・分散性に差が出る
  • RTD缶・ラテ・パウダースティックなど飲料タイプごとに求められる粒度の目安が異なる
  • COA確認は粒度・残留農薬・重金属・微生物に加え、有機JAS認証の有無まで含めるのが実務の基本
  • 厚生労働省の農薬ポジティブリスト制度と有機JAS規格(農林水産省)は輸出入双方で重要な要件となる

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抹茶の粒度とは――D50・D90から何がわかるか

抹茶の粒度は一般にレーザー回折・散乱法(Laser Diffraction)で測定され、体積基準の累積粒度分布から算出したパーセンタイル値で表します。商品規格によく登場するのがD50とD90の2つです。

D50(中央粒径)とD90(90パーセンタイル粒径)

D50は累積体積分布が50%となる粒子径で、粒度分布の「代表値」として広く使われます。D90は累積90%点に対応する粒径で、「粗い側の上限」を示す指標です。飲料の口当たりや沈殿速度に特に影響するのはD90であり、D90が大きいほど粗粒子の割合が多く、沈殿や舌触りの粗さが顕著になりやすい傾向があります。

一般に、超微粉末として扱われる抹茶の粒径は20μm以下を目安とする場合が多く、高品質なセレモニアルグレードではさらに細かい粒度分布となることが知られています。ただし、どの粒度が「適切」かは飲料タイプや製法・安定剤の有無によって異なるため、原料選定時に用途ごとの要件を整理することが重要です。

測定条件の確認が重要な理由

レーザー回折法による粒度測定は、分散媒(水またはエタノール)・超音波処理の有無・屈折率設定によって結果が変わります。同じ抹茶サンプルでも測定条件が異なれば値が異なるため、COAに記載の粒度データを比較する際は測定条件(分散媒・分散剤・超音波出力・測定装置機種)まで確認することをお勧めします。

石臼挽きと工業粉砕――粒度特性と品質への影響

抹茶の粉砕方法として主に「石臼挽き」と「工業粉砕(ボールミル・気流粉砕など)」の2種類があります。それぞれの粒度特性を理解しておくと、原料規格の要件設定や飲料品質の予測に役立ちます。

石臼挽き

伝統的な石臼挽きは低速回転(一般に毎分30〜40回転程度)で行われるため、摩擦熱が抑制され、カテキン・葉緑素などの熱感受性成分の変性が起きにくいとされます。粒度分布は比較的シャープで、均一な超微粉末が得られやすいのが特徴です。一方、処理速度は低く製造コストが高くなるため、高付加価値製品や輸出向けプレミアム品に多く使われます。

工業粉砕(ボールミル・気流粉砕)

大量処理に適した工業粉砕では、ボールミルや気流式粉砕機を用います。処理能力は高いですが、石臼に比べて摩擦熱が発生しやすく、粒度分布が広くなる傾向(粗粒子と微粒子が混在)があります。飲料用の加工用抹茶として使われる場合は、粉砕後の分級(ふるい分け)によって粒度を揃える工程が設けられることもあります。

処方開発段階でサンプル比較を行う際は、粉砕方法・石の種類・処理条件を含む製造工程情報もサプライヤーに確認しておくと、ロット間の再現性評価に役立ちます。

飲料タイプ別 粒度・分散性要件の目安

飲料の種類によって、求められる粒度・分散安定性・製造上の許容範囲は異なります。以下の表は一般的な検討の出発点となる目安を示したものです。用途ごとの実際の仕様は、自社の製造設備・充填ライン・消費期限設計に合わせて検証してください。

飲料タイプ 粒度の方向性(D90目安) 主な分散課題 沈殿リスク 主な対策の方向性
RTD缶・PETボトル(無糖) 小さいほど有利(超微粉末推奨) 長期保存中の層分離 高 均質化処理+安定剤の組み合わせ
ラテ系(乳製品・植物性ミルク混合) 中程度でも乳タンパクが補助 脂質層との界面安定性 中〜高 乳化状態の確認が重要
コールドブリュー・低温抽出系 溶解より懸濁が前提 低温下での粘度変化と沈降 高 振って飲むタイプではD90許容幅が広がる場合も
パウダースティック(溶かして飲む) 溶解性・湿潤性を優先 ダマになりやすい 低(使用直前溶解) 造粒・噴霧乾燥との組み合わせが多い
高濃度業務用ベース(希釈前提) 目的に応じて選定 希釈後の均一性確保 中 安定剤配合後の最終系で保存試験を実施

※上記はあくまで一般的な検討の出発点となる目安であり、特定のグレードや仕様値を保証するものではありません。最終的な仕様値は製造設備・充填条件・保存試験の結果に基づいて設定してください。

沈殿が起きるメカニズムと処方技術での対応

抹茶は水に溶解するのではなく懸濁(サスペンション)する原料です。粒子はストークスの法則に従い、粒子径の2乗・密度差に比例した速度で沈降します。粒子径が小さいほど沈降速度は遅くなるため、粒度の微細化が沈殿抑制の基本的なアプローチとなります。

均質化(ホモジナイゼーション)

高圧ホモジナイザーや超高温・超高圧処理(UHT/HPP)による均質化は、粒子のさらなる微細化と凝集抑制に有効です。均質化により粒子が細かくなると沈殿が減少し、色・風味の均一性も向上する傾向があります(Tetra Pak「均質化により飲料の品質を向上させる9つの方法」参照)。ただし、処理条件によっては熱変性や風味変化が生じるため、原料の熱感受性との兼ね合いで条件設定が必要です。

増粘剤・安定剤の活用

キサンタンガム・ジェランガム・ペクチン・カラギーナンなどの増粘多糖類は、飲料系に添加することで溶液粘度を高め、粒子の沈降速度を遅らせます。ただし、添加量が多いと舌触りやのどごしに影響するため、粒度微細化と安定剤の組み合わせで最小限の添加量を目指す設計が一般的です。使用する添加物の種類・用量は厚生労働省「食品添加物」(2026年11月時点)の基準に従ってください。

ゼータ電位と分散安定性

コロイド科学におけるゼータ電位は、粒子表面の電荷量を示す指標です。一般に±30mV以上(絶対値)であれば静電反発による分散安定性が期待できるとされています。ゼータ電位はpH・塩濃度・乳化剤の種類によって変化するため、処方設計の段階で確認しておくと、安定系の設計根拠として活用できます。抹茶粒子のゼータ電位は処方系(pH・成分)によって変わるため、実際の飲料系で測定することをお勧めします。

沈殿評価の実務フロー(判断例)

  1. 使用原料の粒度(D50・D90)をCOAで確認する
  2. 目標処方系(水・乳・pH・糖度)でスラリーを調製し、静置試験(例:5℃・25℃各48時間)を実施する
  3. 沈殿量・上清の透明度・振り戻し時間を記録し、許容範囲を設定する
  4. 許容外の場合は①粒度の微細なグレードへ変更、②均質化条件の最適化、③安定剤の種類・量の調整、の順で対応を検討する
  5. 最終処方で保存試験(賞味期限相当期間)を実施し、実製品での沈殿挙動を確認する

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原料規格書(COA)で確認すべき粒度・品質項目

抹茶サプライヤーから提供されるCOA(Certificate of Analysis)や規格書には、品質管理上の重要指標が記載されます。飲料開発・調達担当者が確認すべき主な項目を以下にまとめます。

確認項目 確認のポイント 調達上の重要度
粒度(D50・D90) 測定方法・分散媒・測定機種まで確認する 高
水分含量 水分が高まるとケーキング(固まり)やカビ発生リスクが増す。受入規格の水分上限はサプライヤー規格書および用途別の品質基準で確認する 高
残留農薬 厚生労働省の農薬ポジティブリスト制度に基づく基準値以内であることを確認 高(輸入品は特に重要)
重金属(鉛・カドミウム等) 食品衛生法に基づく基準・自社規格に照らして確認 高
大腸菌群・一般生菌数 飲料用途では微生物管理が厳格に求められる 高
有機JAS認証の有無 有機表示が必要な場合は認証機関名と認証番号まで確認 有機訴求品で必須
色差(L*a*b*値) ロット間の色安定性確認に有用。製造工程変更時は比較データを要求する 中〜高
カフェイン含量 低カフェイン訴求品・子ども向け製品では定量値と根拠が必要 用途による
原産国・産地情報 原材料表示・輸出証明・国別規制対応に必要 高

COA受領時の確認チェックリスト

  • □ 粒度データに測定方法・分散媒・装置機種の記載があるか
  • □ 残留農薬はポジティブリスト制度の対象農薬について基準値以内か(検査対象農薬の範囲をサプライヤーに確認)
  • □ 有機JAS認証の場合、認証機関・認証番号・適用範囲(農産物/加工食品)が明記されているか
  • □ 有効期限・ロット番号・サンプリング方法が明記されているか
  • □ 分析機関が第三者認定機関(ISO 17025認定等)か確認する
  • □ ハラール・コーシャなどの宗教認証が必要な販路では認証書の原本を別途入手する
  • □ 色差データ(L*a*b*値)は前回ロットとの比較が可能か

農薬ポジティブリスト制度と有機JAS――輸出入で必要な法令知識

抹茶を原料として使用する飲料メーカーにとって、農薬規制と有機認証の仕組みを理解しておくことは、コンプライアンスリスクの低減と取引先への説明責任の観点から重要です。

残留農薬ポジティブリスト制度(厚生労働省)

農薬ポジティブリスト制度は、食品に残留する農薬・動物用医薬品・飼料添加物に対して残留基準値を設定し、基準値を超えるもの、または個別基準値が設定されていない成分が含まれる食品の販売を原則禁止する制度です。施行年次・一律基準の数値・対象物質の最新情報は、厚生労働省「食品中の残留農薬等(よくある質問)」など所管官庁の最新公表資料で必ずご確認ください。茶類は農薬使用が多い作物であることから、仕入れ先の農薬管理状況の確認が特に重要です。

有機JAS規格(農林水産省)

農産物や加工食品に有機表示を行うには、農林水産省が定める有機JAS規格に適合し、登録認証機関による認証を受けることが必要です。有機JAS認証を受けた抹茶は、農薬・化学肥料に関する栽培管理が第三者によって確認されており、欧州・北米などの輸出市場での「オーガニック訴求」の根拠として活用されます。「有機抹茶」等の具体的な表示要件は農林水産省の最新公表資料で必ずご確認ください(農林水産省「有機食品の検査認証制度」)。

輸出対応における留意点

EU・米国・カナダなど主要輸出先ごとに、MRL(残留農薬最大基準)が異なります。日本国内で合法な農薬使用量が輸出先で基準超となるケースもあるため、輸出専用原料を調達する場合は産地・農薬履歴証明(農薬使用記録)をサプライヤーから入手することが望ましいです。国内茶業の生産動向や政策情報は農林水産省が「茶をめぐる情勢」等の資料として定期的に公表しています。

日本抹茶輸出機構(JMEX)が選ばれる場面

日本抹茶輸出機構株式会社(JMEX)は、日本産抹茶を海外へ輸出している事業者で、43カ国への海外輸出実績があります。京都・宇治をはじめ、鹿児島・福岡・静岡など日本各地の産地の抹茶を取り扱っており、有機JAS認証付きのセレモニアルグレードから加工用まで、幅広いグレードの抹茶を取り揃えています。

飲料開発の原料調達において、JMEXに相談が寄せられるのは主に次のような場面です。

  • 粒度・グレード仕様のすり合わせ:業務用・OEM用の粉末抹茶サンプルについての問い合わせを受け付けており、用途・販売先に応じた産地・グレードの提案が可能です。
  • 書類対応・COA整備のサポート:輸出で培ったCOA・残留農薬検査結果・有機JAS関連書類などの書類対応の知見を踏まえて相談に応じています(個別案件での提供可否は都度確認)。
  • ハラール対応が必要な販路:ハラール認証を取得しており、ハラール要件が求められる中東・東南アジア市場向け飲料開発での活用も検討できます。
  • 有機JAS訴求が必要な製品設計:有機JAS認証付き抹茶を取り扱っており、有機表示が必要な製品設計に対応できるグレードの確認が可能です。

価格・MOQ・納期・OEM対応範囲など個別条件については、各案件の詳細に応じて個別にご相談ください。

抹茶の規格・品質条件について相談する

必要な規格・品質条件、サンプル、取引条件などについて、日本抹茶輸出機構(JMEX)へご相談いただけます。

よくある質問(FAQ)

抹茶の粒度は何μm以下が飲料に適していますか?

用途によって異なりますが、業界では一般にD90が20μm以下(D50は10μm前後)の超微粉末が飲料用途に適するとされています。ただし、目標値は飲料タイプ・安定剤の有無・製造設備によって変わるため、最終的には自社の処方系・保存試験で確認することが重要です。

抹茶飲料の沈殿を防ぐ方法にはどのようなものがありますか?

主に①粒度の微細化(D90を小さくする)、②均質化処理(高圧ホモジナイザー等)、③増粘剤・安定剤の添加(キサンタンガム・ジェランガムなど)の3つのアプローチがあります。実際には複数の手法を組み合わせ、保存試験で沈殿量・振り戻し性を確認しながら設計します。

石臼挽き抹茶と工業粉砕品の品質の違いは何ですか?

石臼挽きは低温・低速粉砕のため熱変性が起きにくく、色・香り・フラボノイド成分の保持に有利とされます。一方、工業粉砕は大量処理に適していますが、粒度分布が広くなる傾向があります。飲料用途では、コストと品質バランスを考慮してグレードを選定します。

抹茶のCOAで特に重要な確認項目は何ですか?

飲料開発では粒度(D50・D90と測定条件)・残留農薬・重金属・微生物項目(大腸菌群・一般生菌数)が最優先です。有機表示が必要な場合は有機JAS認証書の確認も必須となります。また、色差(L*a*b*)をロット管理に活用することで色の均一性を維持しやすくなります。

有機JAS認証付き抹茶は輸出に使えますか?

国内の有機JAS認証は、EU・米国など多くの輸出先でオーガニック認証の根拠として活用できます。ただし、輸出先国ごとに認証の相互認証状況や表示要件が異なるため、販売する国の規制を事前に確認することが重要です。農林水産省の有機JAS制度の詳細は農林水産省「有機食品の検査認証制度」をご参照ください。

輸入抹茶原料の農薬規制はどこで確認できますか?

国内販売向け原料の農薬基準は、厚生労働省「食品中の残留農薬等(よくある質問)」で確認できます。輸出向けの場合は、各輸出先国のMRL規制を輸出先政府機関または専門商社・輸出コンサルタントに確認することをお勧めします。

COAの測定値がロットによって変動する場合はどう対応すればよいですか?

粒度・色差・農薬検査値はロットによって変動するのが一般的です。対応として、①受入検査規格(上下限値)をサプライヤーと合意して規格書に明記する、②変動幅が大きい場合は製造工程改善・分級工程の追加をサプライヤーに要請する、③自社受入段階でサンプリング検査を実施する、の3点を組み合わせることが実務上の標準的アプローチです。

情報源と確認方法(Sources & Methodology)

本記事は、下記の公的機関などの公開情報と、編集部による実務観点の整理に基づいて作成しています。法令・統計・市況は更新されるため、最新情報は各一次情報でご確認ください。

Last reviewed: 2026年11月5日(編集部による情報源の確認時点)。数値例・計算例は考え方を示す仮定であり、実勢価格や特定事業者の取引条件を示すものではありません。

開示:抹茶タイムズは、日本産抹茶の輸出・供給を行う日本抹茶輸出機構株式会社(JMEX)が運営するメディアです。記事内のJMEXに関する記述は同社に関する事実に限り、editorial process として一次情報と照合しています。

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まとめ

抹茶の粒度・分散性・沈殿特性は、飲料製品の品質設計において無視できない原料物性です。以下の要点を押さえることで、調達から処方開発、品質管理まで実務を効率化できます。

  • 粒度指標はD50(代表値)とD90(粗粒子上限)で評価し、測定条件を含めてCOAを確認する
  • 石臼挽きは風味・色保持に有利、工業粉砕は大量処理向けで粒度分布が広くなりやすい
  • 飲料タイプ別に求められる粒度・安定性の目安は異なる。保存試験・沈殿評価を処方設計の早期段階で実施する
  • 沈殿防止策は粒度微細化・均質化・安定剤添加の組み合わせ設計が基本
  • COAでは粒度・農薬・重金属・微生物に加え、有機JAS認証の有無まで確認する
  • 残留農薬はポジティブリスト制度(厚生労働省)、有機訴求は有機JAS規格(農林水産省)に基づいてコンプライアンスを管理する

原料の仕様選定に迷う場合は、まず使用したい飲料タイプと製品コンセプトを整理した上で、複数グレードのサンプルを取り寄せて実際の処方系で評価することをお勧めします。規格・品質条件のご相談はサプライヤーに早めに打診することで、開発スケジュールの短縮につながります。

必要な規格・品質条件(色・粒度・検査書類など)をお聞きし、対応可能な範囲をご案内します。用途・販売先に応じて、最適な産地・グレードをご提案します。

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