抹茶の供給不足にどう対応する?食品メーカー・飲食チェーンの調達戦略
抹茶の供給不足への最短の対応策は、①複数産地・複数サプライヤーへの調達分散、②年間数量確約型の長期契約、③品質規格と必要書類の事前整備という3点の組み合わせです。単一の調達先に依存したまま需給ひっ迫を迎えると、価格交渉力を失うだけでなく原料の確保そのものが困難になる局面があります。
農林水産省の統計によると、抹茶の原料となるてん茶の国内生産量は2024年(令和6年)に5,336トンに達し、10年前の約2.7倍に拡大しています(農林水産省 茶に関する情報、2026年11月時点)。しかし世界的な需要の伸びはこれを大きく上回っており、2024〜2026年にかけて需給ギャップが顕在化した状態が続いています。食品メーカーや大手飲食チェーンの調達部門では、旧来の「その都度発注」型の購買から戦略的な原料確保への転換が急務となっています。
この記事では、供給不足の構造的背景を一次情報とともに整理したうえで、調達戦略の立て方・サプライヤー評価基準・コスト管理のポイントを実務に即して解説します。価格に関する数値は出典が確認できたものに限り記載し、確認できない数値については定性的な説明にとどめています。
この記事のポイント
- てん茶(抹茶原料)の国内生産量は増加傾向にあるが、世界的な需要急増に追いつかない構造的な供給制約がある
- 調達リスクの低減には「産地・仕入れ先の複数化」「長期数量確約契約」「品質・認証書類の整備」が3本柱となる
- サプライヤーを選ぶ際は、品質証明書(COA)・残留農薬検査・認証取得状況・書類対応力を定量的な基準で評価する
- コスト管理の鍵は、スポット購入への依存を減らしグレード別・用途別に調達設計を分けること
- 輸出・業務用実績のある国内窓口を活用することで、書類手続きの負荷を軽減できる場合がある
抹茶粉末をお探しの企業様へ
弊社では、京都・宇治をはじめ、鹿児島・福岡・静岡など日本各地の産地から、有機JAS認証付きのセレモニアルグレードから加工用まで、幅広いグレードの抹茶を取り揃えております。
「案件はあるのに、安定して抹茶を仕入れられない…」
「新商品・新メニューに抹茶を使いたい」
必要な数量と供給期間をお聞きし、対応可能な供給条件をご案内します。
\こちらもあわせてお読みください/
抹茶の供給不足はなぜ起きているのか
供給不足の根本原因は「不作」ではなく、世界的な需要の急増です。SNSや健康志向の高まりを背景に欧米・東南アジア・中東での抹茶消費が急拡大した一方、生産側の対応には構造的な時間的制約があります。
第一の制約は茶樹の生育期間です。てん茶の栽培に適した被覆園の新設から安定収穫に至るまでには、一般に数年程度かかるとされています。第二は石臼の製造能力です。抹茶の仕上げ加工には石臼による細微粉砕が不可欠ですが、石臼は職人による手作業で製造されるため短期間に増産することが難しく、加工能力が需要増に追いつかない状況が続いています。
産出額の面では、農林水産省の統計によると令和6年(2024年)の荒茶産出額は763億円に達し、鹿児島県が統計開始以来初めて全国1位となりました(農林水産省 茶に関する情報、2026年11月時点)。輸出面では財務省の貿易統計によると2025年の緑茶輸出額は約721億円と過去最高を更新しており(財務省 貿易統計、2026年11月時点)、国内需要と輸出需要が同時に拡大するという構造が続いています。
煎茶生産者がてん茶へ転作する動きは2024年から静岡県を中心に急速に広まっており、生産拡大の兆しも見られます。しかし茶樹の生育期間と石臼の生産能力という二重の制約から、需給均衡には数年単位の時間がかかるという見方が業界では一般的です。調達担当者は「不足が続く」ことを前提に、安定調達の仕組みを今から構築しておくことが重要です。
供給不足が食品メーカー・飲食チェーンに与える影響
供給不足が長期化すると、法人バイヤーには複数のリスクが同時に顕在化します。原料価格の上昇だけでなく、「希望グレードが入手できない」「納期が不確定になる」「品質不安定な代替品が流通する」という問題が重なることで、製品開発・メニュー設計・コスト管理のいずれにも影響が及びます。
実際に国内大手の食品メーカーが原料の安定供給を優先して抹茶フレーバー商品の製造を終了した事例も報じられており、調達部門の判断がブランド戦略に直結することが明らかになっています。飲食チェーンでは仕入れ先から購入上限数量を設定されたり、再入荷まで数週間待たされたりするケースも報告されています。
| 影響の種類 | 具体的な問題 | 対応優先度 |
|---|---|---|
| 価格リスク | スポット調達単価の上昇・年度予算の超過 | 高 |
| 供給リスク | 希望グレード・数量の入手困難 | 高 |
| 品質リスク | 代替品・粗悪品・偽装品の流通増加 | 高 |
| 書類リスク | 残留農薬基準・産地証明書の不整備 | 中〜高 |
| 納期リスク | 製品開発・新商品ローンチスケジュールへの影響 | 中 |
品質リスクについては、国際的な調査で一部の低グレード・廉価ブレンド品から重金属(鉛・砒素・カドミウム)が国内外の安全基準値を超えるレベルで検出された事例が報告されています。調達先を急いで代替する際には、品質証明書(COA)と残留農薬検査結果の確認が欠かせません。
調達リスクを分散する3つの戦略
供給不足環境での調達安定化は、一つの手段で解決できるものではありません。以下の3つの戦略を組み合わせて実施することが、購買部門の実務上の基本となっています。
戦略①:複数産地・複数サプライヤーへの分散
京都・宇治、鹿児島、福岡、静岡の各産地はてん茶の生育環境・収穫時期・品質特性がそれぞれ異なります。単一産地への依存を解消し、2〜3産地から調達することで、一つの産地で不作や価格高騰が起きた場合でも影響を緩和できます。サプライヤーについても、一次卸・産地直取引・輸出仲介業者など複数の窓口を確保しておくことが基本的なリスクヘッジになります。
戦略②:年間数量確約型の長期契約
スポット調達から「年間数量確約の基本契約+スポット補完」の形に移行することで、需給ひっ迫時でも優先的に原料を確保できます。長期契約では価格の改定ルール(例:年1回見直し、参照指標の明記)を契約書に盛り込むことが、双方にとってリスクを公平に分担する形となります。最低発注量・最大変動幅を事前に合意しておくことで、生産量の急変動にも柔軟に対応できます。
戦略③:品質規格と書類要件の事前整備
緊急時に新しいサプライヤーを迅速に切り替えるためには、自社の品質規格・認証要件・書類フォーマットを事前に文書化しておく必要があります。残留農薬ポジティブリスト(厚生労働省)への適合確認、有機JAS認証書(農林水産省)、COAのフォーマット要件などを一覧にしておくことで、新規サプライヤーの評価を短期間で完了できます(農林水産省 JAS制度、2026年11月時点)。
サプライヤー選定の評価チェックリスト
新規サプライヤーを評価する際は、主観的な印象ではなく定量的・定性的な基準で判断することが重要です。以下のチェック表は、食品メーカーや飲食チェーンが業務用抹茶のサプライヤーを選定する際に確認すべき主要項目を示しています。
| 評価項目 | 確認内容・確認方法 | 重要度 |
|---|---|---|
| 品質証明書(COA) | ロットごとに成分・水分・重金属・農薬残留の試験結果が添付されるか | 必須 |
| 残留農薬検査 | 厚生労働省の食品衛生法(残留農薬ポジティブリスト制度)に適合しているか | 必須 |
| 有機JAS認証 | 取得の有無・対象グレードの範囲(農林水産省登録認定機関による認証) | 用途による |
| ハラール認証 | 取得の有無(輸出先・販売市場の要件による) | 用途による |
| 産地の明示 | 産地(都道府県・地区)が証明できる書類があるか | 高 |
| 供給量の安定性 | 年間の最低供給保証量・予備在庫方針はあるか | 高 |
| 書類対応力 | 衛生証明書・産地証明書など輸出向け書類の発行実績があるか | 輸出時必須 |
| サンプル提供 | 用途・グレードに応じたサンプルを評価前に提供できるか | 高 |
| コミュニケーション | 問い合わせへの応答速度・日本語対応・仕様変更への柔軟性 | 中 |
実務では、まず「必須」項目を満たさないサプライヤーを除外し、次に用途(食品加工・飲料・輸出向けなど)に応じた認証要件でスクリーニングします。最終的にはサンプルを入手して自社の評価基準(色・風味・粒度・溶解性など)で検証してから本発注に移行するのが基本手順です。
\関連記事はこちら/
コスト管理と価格変動への備え方
抹茶の調達コスト管理では、グレード設計と発注方針の両面から取り組むことが重要です。加工用グレードとセレモニアル・プレミアムグレードでは用途・品質・単価帯が大きく異なるため、用途別にグレードを明確に定義することが出発点になります。
以下は調達コストを試算する際の考え方を示した仮定例です。実際の価格は時期・数量・グレード・取引条件によって大きく変動します。この数値はあくまで計算の考え方を示す仮置きであり、市場の実勢価格を示したものではありません。
仮に業務用加工グレードを「単価X円/kg、月間Ykg」使用する場合、年間調達コストは「X × Y × 12」で算出できます。スポット調達時に単価が仮に2割上昇した場合の追加コストは「X × Y × 12 × 0.2」と試算されます。このような試算を先に用意しておくと、長期契約による価格固定がもたらす予算安定効果を社内・経営層へ説明しやすくなります。
価格変動への備えとして一般に用いられる考え方の一つは、①ベースとなる長期固定価格枠でコアを安定させ、②残りをスポット・柔軟枠として相場変動時にも対応できる設計です。全体の何割を固定枠にするかは自社の原料消費量・在庫能力・予算サイクルに合わせて個別に検討してください。スポット購入へ過度に依存すると、需給ひっ迫局面での価格影響を直接受けやすくなります。
日本抹茶輸出機構(JMEX)が選ばれる場面
日本抹茶輸出機構株式会社(JMEX)は、日本産抹茶を海外へ輸出している事業者で、43カ国への海外輸出実績があります。京都・宇治をはじめ、鹿児島・福岡・静岡など日本各地の産地の抹茶を取り扱っており、複数産地からの調達を検討する際の窓口として活用できます。
グレードの面では、有機JAS認証付きのセレモニアルグレードから加工用まで幅広いグレードを取り揃えています。ハラール認証も取得しており、ハラール対応が求められる市場向けの製品開発においても確認できます。用途によって有機JAS対応品の要否は異なりますが、複数グレードを一括で相談できるため、用途別設計の段階から活用することも可能です。
業務用・OEM用の粉末抹茶については、サンプルの問い合わせを受け付けており、用途・販売先に応じた産地・グレードの提案を行っています。輸出で培ったCOA・残留農薬検査結果・有機JAS関連書類などの書類対応の知見をもとに相談に応じることもできます(個別案件での対応可否は都度確認)。価格・最低発注数量・供給量・納期などの詳細は個別にご相談ください。
抹茶の調達条件について相談する
必要な数量や供給期間、サンプル、取引条件などについて、日本抹茶輸出機構(JMEX)へご相談いただけます。
よくある質問(FAQ)
抹茶の供給不足はいつごろ解消されますか?
明確な解消時期を確定的に示せる情報はありません。てん茶の生産は増加傾向にあり農林水産省も転作支援を進めていますが、茶樹の生育期間と石臼の増産制約から、構造的な需給均衡には数年単位の時間がかかるという見方が一般的です。調達担当者は「不足が続く」ことを前提に安定調達の仕組みを先に構築することを優先してください。
国産抹茶と海外産(中国産など)の違いは何ですか?
日本産(国産)抹茶は被覆栽培・石臼挽きの製法を特徴とし、産地・グレードに応じた品質管理体制が整っています。中国産をはじめとする海外産品はコスト面で競争力がある一方、品質のばらつき・残留農薬基準の適合状況・産地表示の正確性については個別確認が必要です。用途(加工向け・食品ラベル表示向け・輸出向け)に応じて産地要件が異なる場合があるため、自社の規格書と販売先の要件を先に整理したうえで判断することを推奨します。
長期契約を締結する際に最低限確認すべき書類は何ですか?
最低限確認すべき書類として、①品質証明書(COA)のフォーマットと発行頻度、②残留農薬検査結果(厚生労働省の食品衛生法に基づくポジティブリスト適合確認)、③産地証明書、④必要な認証書類(有機JAS・ハラールなど用途による)の4点があります。これらを契約書の別添として義務づけることで、受領後の品質トラブルを抑制できます。
有機JAS対応の業務用抹茶を調達するにはどうすればよいですか?
有機JAS認証は農林水産省の登録認定機関が審査・認証したものです。調達の際はサプライヤーが有機JAS認証を取得しているかを認証番号・認定機関とともに確認します。有機JAS認証品は一般的に非認証品より入手量が限られるため、早期の供給計画の確保と年間数量の事前合意が特に重要になります。
サンプルを受け取った後、どのような手順で評価すればよいですか?
一般的なサンプル評価の手順は、①書類確認(COA・残留農薬検査結果の照合)→②外観確認(色・粒度・異物の目視)→③溶解性・粒度の測定(用途に応じた機器測定)→④風味評価(官能検査・自社標準品との比較)→⑤加工適性試験(実際の配合・製造条件での試作)という流れが基本です。評価基準を事前に数値化・文書化しておくと、複数サプライヤーの横比較が容易になります。
煎茶粉末など代替素材での対応は現実的ですか?
煎茶粉末・玉露粉末・緑茶エキスなどは、コスト・入手性の面で代替として検討されることがあります。ただしこれらは抹茶と風味・色調・機能性が異なるため、採用には製品ラベル表示・消費者への訴求・レシピ設計の全面見直しが必要です。代替素材への移行は「緊急の不足対応」ではなく、製品コンセプトの再設計として位置づけて判断することを推奨します。
情報源と確認方法(Sources & Methodology)
本記事は、下記の公的機関などの公開情報と、編集部による実務観点の整理に基づいて作成しています。法令・統計・市況は更新されるため、最新情報は各一次情報でご確認ください。
Last reviewed: 2026年11月2日(編集部による情報源の確認時点)。数値例・計算例は考え方を示す仮定であり、実勢価格や特定事業者の取引条件を示すものではありません。
開示:抹茶タイムズは、日本産抹茶の輸出・供給を行う日本抹茶輸出機構株式会社(JMEX)が運営するメディアです。記事内のJMEXに関する記述は同社に関する事実に限り、editorial process として一次情報と照合しています。
抹茶タイムズで世界の抹茶トレンドをチェックしよう
世界で広がる抹茶ブームや市場データ、産地・価格・規制に関する記事を深掘りしたい方は、ぜひ「抹茶タイムズ」をご覧ください。
まとめ
抹茶の供給不足は短期的に解消される性質のものではなく、食品メーカー・飲食チェーンの購買部門には戦略的な原料調達体制の構築が求められています。この記事のポイントを以下に整理します。
- 背景を把握する:供給不足の原因は需要急増と生産拡大の構造的な時間差。解消には数年単位の見通しが必要
- リスクを分散する:複数産地・複数サプライヤー+長期数量確約契約+品質書類の事前整備が3本柱
- サプライヤーを定量評価する:COA・残留農薬・認証・書類対応力をチェックリストで評価し、主観に頼らない選定を
- コストを構造化する:スポット依存を減らし、グレード別・用途別に調達設計を分けることで予算安定を図る
- 次のステップ:まず自社の品質規格・書類要件を文書化し、複数サプライヤーへの問い合わせとサンプル取り寄せを開始する
業務用抹茶の数量・年間供給条件・産地グレードについては、サンプル依頼と並行して専門の調達窓口へ相談することが、安定調達体制を早期に構築するための近道です。
必要な数量と供給期間をお聞きし、対応可能な供給条件をご案内します。用途・販売先に応じて、最適な産地・グレードをご提案します。





